RADIO-K『JUST TWO OF US』5/21リリース決定! 今回復刻のアナログLPレーベル面には"ワルダクミ"あり!コレ、KONTAの仕業?悪戯??
「“RADIO-K”!? “JUST TWO OF US”!? 制作担当によれば「本作のリイシューにあたり社内向けの資料を提出した際、関連する他部門の若いスタッフに説明した内容」とのことだ。旧知のファン各位には周知かと思われるが、今回のリイシュー・シリーズからBARBEEに興味をもった方も多いと聞くので、『暗闇日砲』でも改めて記載しておきたい、とのこと。
『JUST TWO OF US』は“RADIO-K, BARBEE BOYS”と、アーティスト名併記による、今回のリイシュー・シリーズの中では<異色の立ち位置>となる。1988年に公開されたノンストップ・ラブ・ストーリー映画「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」(主演KENJI役と音楽監督を近藤敦がつとめた)のサントラ盤としてリリースされたアルバムでは、近藤敦、いまみちともたかに加え、BARBEE以前に組んでいたバンドメンバー、能勢寛の3人によるユニット“RADIO-K”名義の楽曲(ヴォーカル曲&インスト)とBARBEE名義の楽曲が収録されている。
CDは過去にリイシューされているが(Blu-specCD2 *1によるリイシューは初!)、アナログ盤 *2は今回初のリイシュー。アナログ盤でのコンプリートには絶好の機会となっている、ということで「暗闇日砲」ではさらに!初復刻アナログ盤ならではの隠れた<仕掛け>を特別にご紹介しておこう。
ご存知かつお気づきのファンもいらっしゃるとは思うが、その隠れた<仕掛け>というのは、今回のBARBEE BOYS 40th記念アナログLPでのリイシュー盤ではレーベル面のデザインが一新されている。発端はオリジナル盤からBARBEE BOYSのジャケットデザインを手がけているデザイナー・植田敬治氏のちょっとした遊び心からだった。
(アートワーク、ビジュアル面のキーパーソン、アフター・アワーズ・スタジオ 植田敬治氏については、「暗闇日砲」第三号掲載のYouTube動画「暗闇砲弾」#5#6にご登場いただいている改めてチェックしていただきたい)
今復刻でも『1st OPTION』のB面は当初文字のみのデザインだったところに、ハチ君のバックショットの写真の存在があきらかとなりB面で初採用された。その後も植田氏のアイデアにより、各アルバムのモチーフや写真の一部を使用しての新たなレーベル面デザインが採用され、実はこっそりとシリーズ化されていたようだ。
そして、今回発表の『JUST TWO OF US』のレーベル面では、植田氏のアイデアをベースに、新たにKONTAのアイデアも注入され、シンプルかつ映画のサントラ盤を想起するデザインとなっている。結果的には本作の<隠れた>アピールポイントにもなった。
今後も続く(かもしれない?)リイシュー・シリーズ。復刻LPのレーベル面も楽しみの一つとして注目してほしい。
最後に、本号では別欄にて<『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』じゃないんだぜ---その後のバンドに刺激を与えたRADIO-K>として、この作品と映画を取り上げさせていただいたのでご一読いただきつつ、映画「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」は、Amazon Prime Video、U-NEXTで配信もされているので、是非この機会に『JUST TWO OF US』とセットで楽しんでほしい。
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映画『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』は古村比呂、そして我らがKONTA主演映画として1988年に公開された。お見合いで出会った正直者の元バンドマンと、正直になれない性格のキャリア志望の美人OL…いずれも不器用な同士が素直になれるまでのたった一日を描いた青春映画。二人が花壇や壁を隔てて会話したり、二人別々の線路上で先を見つめているシーン…今見返すとオマージュに気づけるけれど、当時の中高校生にはなんか煮えきれない内容だった。歩き煙草、公衆電話、VHSテープ、避妊具の自動販売機…これは探せば今もあるのだろうけれども、バブル景気の80年代後半の空気感を空虚に描いている。そういえば終盤のラブシーンで同級生のKONTAファンがキャーキャー言っていたのを思い出したが、当時のミュージシャン主演映画にしては大胆な描写だったのはたしか。
エンドロールで面白いのは“音楽 近藤敦”に続いて、“サウンドプロデューサー いまみちともたか”の名前が流れてくる点。バービーボーイズ「使い放題tenderness」を主題歌として、KONTAのサックスをフィーチャーしたインスト「part of silence」を起用したほか、RADIO-Kというユニットが登場することとなった。ユニット名は映画を象徴する台詞“Ready,OK?”とのダブルミーニング。このRADIO-Kプロジェクト、『JUST TWO OF US』のジャケットにはKONTA、いまみち御両人しか写ってないが、「one way love」「sayonara」のソングライティング、そしてボーカルも務める能勢寛というキーパーソン含めてのトリオである。この三人、バービーボーイズの前にマンブル・マーフィーというバンドで活動していた。その唯一のシングル「ファイアーストリート / 芸能クラブ」のAB面をそれぞれ書き分けた名パートナーであり、いまみちともたかとツインギター・アンサンブルを奏でていたのが能勢寛。クリーントーン主体、変拍子リフも織り交ぜたツインギターでKONTAが歌っていて、前史を知った驚きはありつつも、目指すスタイルは当時から明白だった気がして、さすが!と興奮した。このときのツインギター・アンサンブルを一本に落とし込んだのが、初期バービーにおけるいまみちのギタースタイルだったのである。
映画『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』を英訳した『JUST TWO OF US』…でも実は二人ぼっちじゃないんだぜって暗喩がアルバムタイトルには込められていた。こうした遊び心を映画とともにサウンドトラックにも込められているあたりがバービーボーイズ・ワークス。監督を務めた榎戸耕史にとって『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』は初監督作品だったが、彼は1985年作の『台風クラブ』では助監督だった。『台風クラブ』はデビュー直後のバービーボーイズの楽曲を起用していることでバービーファンにはおなじみ。
ジャケットのいまみちのポージングは、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズによる初期の名盤『This Year’s Model』のオマージュ。裏ジャケットではいまみち、KONTAそれぞれのポラロイドと、LAでの能勢のスナップが裏ジャケットに使われているのが楽しい。そもそもいまみちと能勢でまた何かやりたいって構想があったときに、ちょうど映画『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』のサウンドトラックの話がまとまったことで、RADIO-Kのレコーディングは能勢が在住していたNYで行なわれることになった。多忙な中での渡米ではあったが、同年作の『BLACK LIST』におけるNYリミックスで手応えを感じたこともあり、大ヒット作『√5』(1989年)でも海外エンジニアを起用したりと、このときの経験値はバンドに大きな影響と刺激を与えることとなった。
文・写真: 北村和孝