86年発表の「Reflections」が1億3,000万再生され再注目を浴びる!
日向敏文、全世界のリスナー待望のオーケストラによる初のオリジナル・アルバム誕生!
本作も、前作『Angels in Dystopia』(2022年)同様、世界情勢や社会問題、そして未来の見えない若者たちに対する想いがこの作品のコンセプトだ。日々生まれる細かいモチーフから構成に何年もかけた45分の完璧な音世界は、まさに日向ワールドの真骨頂。悲しい曲もただ悲しいだけではなく、明るい曲もただ明るいだけではない。日々悲しいニュースばかりが流れる中で、徹底的に弱者によりそう日向の視線が感じられる。普段オーケストラの演奏に馴染みの薄いポップスのリスナーにも聴きやすい、短めで親しみやすいトラックが揃った。
演奏を担当したのは現在Netflix、Disney、Amazonをはじめ多くのフィルムスコアを手がけるブダペスト・スコアリング・オーケストラ。録音はブタペストのアビー・ロードとも称されるRottenbiller Studioにて2025年2月に行われた。
全62トラック(ストリングスのスポットマイクだけでも19トラック)からSSLアナログコンソールでDSDマスターにトラックダウンを担当したのは、ジョン・ゾーン、アート・リンゼイ、坂本龍一、デイヴィッド・シルヴィアン等とのプロジェクトで知られる名匠オノ セイゲン。音響ハウスにて11日におよぶエディットとトラックダウンの作業によって本作が完成した。渾身のSACD-Hybrid盤としてリリース。
Track List
- Dark Night Overture
- Ⅰ Candles in the Rain
- Ⅱ Fire & Storm
- Ⅲ Lust in the Desert
- Ⅳ Snowfall
- Ⅴ Faith Under the Rubble
- Vendetta
- Never Forgiven
- Joker
- Ⅰ Darkest Night
- Ⅱ il camino
- Ⅲ Phantom
- Bells in the Mist
- Wings of the Lion
- Enigma
- Sweet Rebels
Babylon in the Sands
Dark Night Rhapsody
SACD(Super Audio CD)層には、Alternate Mix(別Mix)が追加され全32曲収録となります。
Composed and Orchestrated by Toshifumi Hinata
The Budapest Scoring Orchestra
Conductor - Zoltán Pad
Violin Solo on "Vendetta" by Román Oszecsinszkij
Recorded at the Rottenbiller Studio in Budapest, Hungary
Engineered by Viktor Szabó
The recording sessions were organized by Bálint Sapszon, the CEO of the Budapest Scoring Orchestra.
Produced by Toshifumi Hinata
in association with Second Language Media, Brooklyn NY - Josh G Dixon, Marina Kaho Iida, and Leon Hinata
Mixed by Seigen Ono at ONKIO HAUS assisted by Soshi Takeda
Mastered by Seigen Ono at SDLab
楽曲解説 (日向敏文:談)

日向敏文 profile
1955年2月23日、東京都大田区生まれ。1973年に学習院高等科を卒業後渡英。サーレイ州ファーナムのオートバイ会社でアルバイトをしながら生活をする。74年に渡米。75年7月にウィスコンシン州アッシュランドのノースランド・カレッジに入学。キーボーディストとして、地元のブルース・バンドやビッグ・バンドに参加するなど、本格的に音楽活動を開始。76年8月には、ボストンのバークリー音楽大学へ転校。78年8月には、ミネソタ州立大学(University of Minnesota -Duluth)の外国人奨学金を獲得して、同校音楽部へ転校。以降4年間に渡って、クラシカル・ピアノを専攻し、理論、作曲、オーケストレーションを学ぶ。自己のリサイタル、歌曲や独奏楽器の伴奏、室内楽、オーケストラなど、音楽全般にわたり活動。82年には、同大学卒業ののち、ミネソタで音楽家としての活動を開始。
85年に、1stソロ・アルバム『サラの犯罪』をアルファ・レコードからリリース。続けて、86年には、2ndアルバム『夏の猫』と、3rdアルバム『ひとつぶの海』をリリース。その後もコンスタントにソロ・アルバムを制作してきた。
91年には『東京ラブストーリー』の劇伴を担当。ドラマ・サントラとしてはオリコン・アルバムランキング最高第5位となる異例のヒットを記録する。97年に手掛けた、ドラマ『ひとつ屋根の下2』の挿入歌「ひだまりの詩」(歌:Le Couple)は、オリコン・シングルランキング第1位を記録、180万枚の大ヒットとなった。1997年のオリコン年間ランキングでも第3位となり、同年の日本レコード大賞優秀作品賞を受賞。Le Coupleのブレイクスルー・ナンバーとなり、彼らは『第48回NHK紅白歌合戦』の出場を果たした。
また、松たか子、佐藤奈々子、Le Couple、竹内結子、中山美穂、KOKIA、ダイアナ ロスなどに楽曲提供、トヨタ、コカ・コーラ、資生堂、アサヒビールなどの多くのCM音楽など、多岐に渡って活躍している。
近年では、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』 、NHK『ETV特集』、「NHK BSスペシャル」、NHK BSドキュメンタリー番組などの音楽を多数担当、管弦楽、室内楽などの音楽も多数作曲している。
Discography [original ALBUMs]
1985 | サラの犯罪 Sarah’s Crime |
---|---|
1986 | 夏の猫 Chat d’Ete |
1986 | ひとつぶの海 Reality in Love |
1987 | Story |
1988 | アイシス ISIS |
1989 | ラプソディ・イン・ザ・トワイライト Rhapsody in the Twilight |
1990 | いたずら天使 Little Rascals |
1995 | ドライヴ・マイ・カー Drive My Car |
1996 | カラー・オブ・ザ・シーズンズ Color of the seasons |
2001 | ヘヴンリー Heavenly Resort Music Series HAWAII |
2006 | ISIS 2 |
2009 | いつかどこかで Somewhere Down the Road |
2022 | Angels in Dystopia – Nocturnes & Preludes |
Dark Night Overture
オケを指揮していたゾルターンが、イタリア歌劇の香りがすると言ったので何か共通意識があることを認識できて嬉しかったです。歌劇にはアクトの合間に曲が盛り込まれているのですが、このアルバムに収録されている曲の多くがそんなイメージで作られています。いわゆる歌劇の、歌が始まる前の前奏曲、序曲は劇のストーリーと並行しながら比較的作風が自由になったり大胆にもなる場であリました。
Babylon in the Sands
Ⅰ Candles in the Rain - Ⅱ Fire & Storm - Ⅲ Lust in the Desert - Ⅳ Snowfall - Ⅴ Faith Under the Rubble
あるフレンチ・ビストロのオーナーがきっかけで知った本で、英国人の冒険家Wilfred Thesigerが書いた「Arabian Sands (邦題:ベドウィンへの道)」が、この曲のインスピレーションにもなりました。アラビア半島のルブ・アル・ハリ砂漠の未開の地「Empty Quarter」を旅した人で、部族との触れ合い等が描かれているとても面白いノン・フィクション。砂漠の廃墟や壁に描かれた謎の絵文字、気温が最低マイナス15度になり最高50度になるような場所。自分もモロッコに行ったりした時もあり、なぜか砂漠に惹かれ音がいろいろと生まれてきます。
Vendetta
ヴァイオリンのソロイストのプレイが素晴らしくて、自分の描いていたものに近いものになりました。タイトルには「復讐」という意味合いがありますよね。The New Yorkerの記者であるカルヴィン・トムキンズが書いた「Living well is the best revenge」という本があって「優雅な生活が最高の復讐である」と訳されてもいますが、僕はWellというのは富のことではなく、気持ちのことを言っているのだと感じます。自分の体験の中でも、人生において嫌な出来事は多々あるだろうが、ただベストに生きるということがそれに対する最高の復讐だ、と。この曲のイメージの裏に渦巻く何かを表現できたらと思いました。
Never Forgiven
なかなか言葉で表現し難い曲なのですが、気持ちをどこに持って行っていいのかわからなくなった時に浮かんだ曲です。
Joker
タイトルはホアキン・フェニックス主演の映画とは関係がなく、いわゆるカードの中のジョーカーみたいなものです。ジョーカーは誰も欲しがらないカードだけど、意外なゲームチェンジャーとなりうる。今の世の中に例えれば、保守もリベラルも入り乱れて混乱状況ですが、本当のジョーカーは実はどこかにポジティブに存在しているかもしれない、それを感じてないと世の中に救いを見出せないのではないかと。不安定な世の中を闊歩しながら乗り切ろうという気持ちです。管楽器、弦楽器が刺激し合う中の緩やかな融合を試みました。
Dark Night Rhapsody
Darkest Night - il camino - Phantom
1曲目の「Darkest Night」は2021年ごろ自分のInstagramに「Rhapsody No.2」として紹介したことがありますが、何回も訪れたことのあるベネチアのイメージで作りました。ベネチアは東と西の貿易の交差点で文化が行き交う場所。音楽的にもバロック、ルネッサンス、クラシック、モダンといろいろな形で表現できるはずと感じました。il Caminoのニュアンスは、ブタペストの彼らならきっと出してくれるだろうという予感はありました。
Wings of the Lion
ベネチアのサンマルコ広場の空にもいる翼のライオンは昔から世界にいろいろな形で存在していますよね。イントロは古楽器のクラムホーンをイメージしていますが、今回クラリネット3本に置き換えてみました。クラムホーン、初めてイギリスに行った時フォーククラブでもあるパブで中世ルネッサンス音楽のバンドが使っていたのですが、とても魅力を感じる楽器です。実際の音はクラリネットとはかなり違いますが、管楽器の元祖みたいな楽器です。
Enigma
(この曲はとても美しいのに、あっという間に終わっちゃいますね、という問いに)実はもう少し長いヴァージョンのものも作ったんですが、この長さが良いと自分で感じました。長くすると伝えたいことの焦点がぼけちゃうような気がして。自分ではタイトルそのものだと思ってます。
Sweet Rebels
頭の中で記憶の中に隠れている過去にいた場所の音みたいなのがあるのですが、この曲のイメージがそれです。