落語 みちの駅

第百二十八回 「第223回 朝日名人会 レポート」
 10月15日午後2時から第223回朝日名人会が開催されました。桂文珍さんの出演もあってほぼ満席の盛況でした。

 二ツ目は入船亭遊京さん「時そば」。たしか三度目の出演です。上方出身で東京落語にいそしむ、ちょっと変わりダネ。飄々とした口調ながら、いつも噺の運びに一工夫があります。この日の「時そば」も仕込みが丁寧で独自なサゲ方をしてくれました。

 桃月庵白酒さん「厩火事」は、まずはマクラ話で「今」を語って笑わせましたが、そこに少しのイヤミもなく、しかもパワフルに落語の「場」を築いてあとにつないでいきました。やや粗かったけれど頼もしい高座。

 仲入り前は春風亭一朝さん「抜け雀」。宿屋の亭主をことさら三枚目にする演出が多い昨今、一朝さんは律気な演出で聴かせました。ことさらおもしろく演じなくても、人物と演者の取り合わせで噺は生きて動くものです。

 中入り後は桂文珍「三枚起請」。名作なのにサゲが型通りという不満が少しあったこの噺を、さすが文珍さんでかなり改善してくれましたが、三通の起請文が次々に登場するあたりは、若き日の文珍口演に一歩をゆずるように思いました。さて、そのチャンスはいつ?

第百二十八回 「第223回 朝日名人会 レポート」
入船亭遊京「時そば」


第百二十八回 「第223回 朝日名人会 レポート」
桃月庵白酒「厩火事」


第百二十八回 「第223回 朝日名人会 レポート」
春風亭一朝「抜け雀」



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著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。