私が欲しいレコード

幻の名盤から架空の一枚まで。今聴きたい、今欲しいレコードを、各界のレコード愛好家のみなさまに、自由な発想で綴っていただきます。

第16回【オカモトショウ(OKAMOTO'S)】 ミュージシャン
第16回【オカモトショウ(OKAMOTO'S)】 ミュージシャン

今やサブスクの優秀すぎるアルゴリズムでいくらでも未知の音楽と出会える時代に、自分が昔ながらの手法で新しく音楽に出会う感動を得られるのが“旅先でのレコードとの出会い”なんじゃないかと思います。



 俺みたいなロックキッズが、ただただこのお題目で何かを書こうと思うと、極論「ビートルズのマト1、MonoとStereo全部集めて聴き比べしたい!」とか「ストーンズの各国版ジャケ違い含め集めて復刻版との違いを楽しみたい!」とかになっていきそうで、そうなるとあとは金の話だけになってしまいそうなのでちょっと違う思考で書いてみようかと思います。

 今の時代、DiscogsやeBay、なんならAmazonでも家に居ながらにしてレコードを探して買うことができる。上に挙げたようなレコードだって、タイミングさえ合えばいくらでも手に入るチャンスがあるし、お金さえ出せば(多分)どんなレコードだってコレクトできる。

 でもレコードのいいところって、世界中で買えるってところもあると思ってて、世界の端まで見てきたわけではないですが今のところ行ったアジア~西洋諸国、それから日本のどの都道府県にもレコード屋さんがあるんです。

 バンドでツアーを回ると俺たちは必ずその地方のレコード屋さんにリハの合間で顔を出しては、時間の許す限りレコードを掘る。全都道府県ツアーを回った時なんて、機材車が4人で買ったレコードの重みで沈み始めちゃって流石に…ってことでそれぞれ自宅に郵送したくらい買っていました。

 旅先で偶然出会ったINUの「メシ喰うな!」のオリ盤、いとうせいこうさんとTINNIE PUNXのサンプル盤7inch、あとはイギリスでScreaming Lord Sutchのオリ盤見つけて興奮したのは今でも覚えてます。どれも宝物です。


INU / メシ喰うな!
(1981)


 正直言うと、レコードの量だけで言えば世界でも東京が一番豊富。だから、本当に欲しいレコードを目掛けて買いに行くなら、東京が一番見つけやすいんです。

 でも、今やサブスクの優秀すぎるアルゴリズムでいくらでも未知の音楽と出会える時代に、自分が昔ながらの手法で新しく音楽に出会う感動を得られるのが今言ったような“旅先でのレコードとの出会い”なんじゃないかと思います。各レコード屋店主さんの熱いコメントなんかでつい手に取ったレコードが新しい出逢いになること、ありますよね?

 数年前ドイツへ行った時、いくつかクラブを巡っている中でしきりとDJがプレイしてる一曲に出逢いました。

 帰国する前にレコード屋さんに駆け込んで、店員さんにどんな曲か、どのクラブでよくかかってたかを説明したらいくつとレコードを用意してくれて、根気よくそれを聴いて行ったらSchackeのKisloty Peopleという曲だったことが判明しました。のちのち調べてみると、その年のRAのナンバーワンを獲得したクラブヒットソングだったので、日本にいてもそりゃいつかは俺のサブスクが紹介してくれたかもしれません。でも、俺は自分の足でクラブを巡っててその曲に出会えたこと、そして自分がその曲やアーティストに対して何の前情報もなく感動した体験をできたことでその曲に特別思い入れができたのです。


Schacke / Kisloty Forever
(2019)


 その音楽、感動を“所有”して“持ち帰ることができる”っていうのが、スマホで簡単に音楽を聴くことができる今の時代ならではのレコードの新しい付加価値なんじゃないかと俺は感じています。

 ということで、今、コロナ禍で実際旅行やツアーに行くことはまだ叶わないけれど、俺は今旅先で素敵なレコードとまた出会いたい、自分の足で見つける運命のレコードが欲しい、です。






オカモトショウ (OKAMOTO'S)

オカモトショウ (OKAMOTO'S)
1990年10月19日ニューヨーク生まれ。 中学在学時、 同級生とともに現在のOKAMOTO’Sの原型となるバンドを結成。 2010年、 OKAMOTO’Sのボーカリストとしてデビュー、 現在までにシングル9枚、 アルバム8枚を発表。 バンドはアメリカSXSWやイギリス、 アジア各国などでもライブを成功させ、 日本国内では日比谷野外音楽堂、 中野サンプラザなどでもライブを開催、 結成10周年となった2019年には初めて日本武道館で単独ワンマンライブを成功させた。

2021年は1月の配信シングル「Young Japanese」を皮切りに「Complication」「M」「Band Music」と怒涛の勢いで新曲を発表。6月30日にはKT Zepp Yokohamaにてワンマン公演「Young Japanese in Yokohama」を開催。

オカモトショウソロ名義でも初のソロアルバム「CULTICA」を2021年4月にリリースするなど活躍の場を広げている。

2018年から2021年3月までNHK教育テレビ「ムジカ・ピッコリーノ」にベルカント号・船長、 ジュリオとして出演。

www.okamotos.net



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