私が欲しいレコード

幻の名盤から架空の一枚まで。今聴きたい、今欲しいレコードを、各界のレコード愛好家のみなさまに、自由な発想で綴っていただきます。

第15回【崎山蒼志】 ミュージシャン
第15回【崎山蒼志】 ミュージシャン

ある種の芸術作品を所有できるという欲が満たされる感覚がある。そして改めて、限りなく音楽と対峙できる、数少ないツールだと思う。



 今私が欲しいレコードとなると結構たくさんある。ぱっと浮かぶものだと、2019年にリリースされたTyler, The Creatorの『Igor』。音楽配信サービス上では擦り切れるほど聴いたし、ジャケもなんともカッコ良く好みだ。買おうと思っていたのに何故だかずっと機会を逃している。多分もうそろそろ本気で買うだろう。あとは今年リリースされたばかりのSPIRIT OF THE BEEHIVEの『ENTERTAINMENT, DEATH』、Iglooghostの『Lei Line Eon』も是非とも入手したい。こうして自分の欲しいレコードを並べていると共通点があることに気づいた。音楽の個人的趣向は大前提としてあるのだろうが、ジャケのデザインと内容の素晴らしさは勿論、その内容の世界観をジャケが先導/拡張しているように感じられるという点である。ジャケと音楽の統一感がある、とも云えるのかもしれない。自分も、よりそう思える作品を作れるように、これからもひたむきに音楽と向き合って行きたい。


Tyler, The Creator / Igor
(2019)



Spirit Of The Beehive / Entertainment, Death
(2021)



Iglooghost / Lei Line Eon
(2021)


 そんな私の16歳のときにインディーズでリリースした1st Album『いつかみた国』がレコードとして出ることになった。非常に有り難い機会だ。『いつかみた国』は、自分にとって怒涛の年であった2018年、9月の三連休に2つのフェスに出演した、その足で連休最終日に録った作品だ。7曲中6曲を一発録りで、かつその日中で録り終えたという、その時の空気感が凝縮された作品となった。ああ、嬉しい。自分の作品がレコードになること自体目標としていたことであったし、一発録りのライブ感や(奏法を含む)楽曲の一貫性など、レコードに向いている作品だと思う。そう、ライブ感のある作品もレコードで映える気がする。立体的な音響をもたらしてくれるというか、良いスピーカーで聞くと本当に生演奏の音がするように感じる。ジャンルでいうならジャズ、自分の場合ガレージパンクロックなども、レコードで買い、聞きたい音楽ではある。
 
 少し話が迂回していたかもしれない。私自身が一番欲しいレコードがある。吉村弘さんの『GREEN』だ。環境音楽家である吉村弘さんが1986年にリリースした作品で、中学生の時、ネット上で知り衝撃を受けた。環境音+リズミカルなパターンだったりどこか神秘的な和音進行をする気持ち良い音質のシンセサイザーが見事に絡み合い、永遠とも呼べる場景を形作り、それを不思議とこちらに見せてくれるような音楽。抜群の浮遊感の裏には、理知的な側面も窺える作品だ。語弊がないように伝えたいのだが、サウンドやアートワークにはやはりどこか1986年を感じさせるものがあり、だがそれこそがまたひとつ音楽を幽玄にしているようにも思う。否、その時々の最善の選択が、音楽を永遠に似た巨大な時間・空間にするのだろう。この『GREEN』全然在庫情報がなく、近年再販されたこともあったらしいのだが、気づいた時には完売していた。いつか巡り会えることを心待ちにしている。


吉村弘 / GREEN
(2020)


 レコードの魅力は計り知れない。音質の良さ、きれいな円盤、LPであるとジャケのデカさ、作品の世界観を堪能できる。またある種の芸術作品を所有できるという欲が満たされる感覚がある。そして改めて、限りなく音楽と対峙できる、数少ないツールだと思う。






崎山蒼志 (さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市出身。

2018年5月インターネット番組の出演をきっかけに世に知られることになる。
現在、テレビドラマや映画主題歌、CM楽曲などを手掛けるだけではなく、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。
またFUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVALなど、大型フェスからのオファーも多い。

2018年7月「夏至」と「五月雨」を配信リリース、12月5日にはファースト・アルバム『いつかみた国』をリリースした。
合わせて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。

2019年5月には自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで実施、
10月にセカンド・アルバム『並む踊り』を発売し全国10公演のリリースツアー「並む踊りたち」を開催。

2021年1月27日にアルバム『find fuse in youth』でメジャー・デビュー。
初のバンドスタイルでのリリースライブは即日完売。
3月31日には早くも新曲「逆行」を配信リリースした。

sakiyamasoushi.com



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