落語 みちの駅

第百十一回 「第205回朝日名人会」
 12月19日PM2:00より第205回朝日名人会。今年は約半年コロナ禍のために休会を余儀なくされました。今回もまだ試運転の段階で客席は半分近くまでまばらに空いた状態でしたが場内の空気は暖かさを取り戻しつつあります。

 真打も近い三遊亭めぐろ「ニワトリ」。いわば烏の「恩返し」話のパロディです。飄々とした語り口で自作を聴かせてくれました。

 柳家喬太郎「にゅう」。喬太郎さん発掘の古典ですが、この会のお客様には初耳だったかもしれません。まくらでトランプの往生際をたしなめていました。

 林家正蔵「五貫裁き」。運びがよく生き生きした口演でしたが小さな傷も散見されました。いずれ良い「五貫裁き」になりそうです。

 三遊亭歌武蔵「稲川」。口跡と運びが一段と吹っ切れてきていい高座になりました。この調子でやってほしい。来年が楽しみです。

 柳家さん喬「牡丹燈籠」三。栗橋宿を中心に長講。交錯する二つのストーリーを物語調のタッチで語り収めました。往年の圓生・正蔵が考えもしなかった手法です。「圓朝全集」を肉声化すれば、こうやらざるを得ないといえるでしょう。

 「栗橋宿」が終わりました。次回(第四回)は大団円です。




第百十一回 「第205回朝日名人会」
三遊亭めぐろ「ニワトリ」


第百十一回 「第205回朝日名人会」
柳家喬太郎「にゅう」


第百十一回 「第205回朝日名人会」
林家正蔵「五貫裁き」


第百十一回 「第205回朝日名人会」
三遊亭歌武蔵「稲川」

著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。