西寺郷太 It's a Pops

NONA REEVES西寺郷太が洋楽ヒット曲の仕組みや背景を徹底分析する好評連載

第28回 ワム!「恋のかけひき(Everything She Wants)」【前編】

第28回 ワム!「恋のかけひき(Everything She Wants)」【前編】

―― 郷太さん。今日はホール&オーツ「マンイーター」以来、約5か月ぶりの取材となります。

西寺 ご無沙汰です。前回のホール&オーツ「マンイーター」は自宅からのZoom取材でしたから、実際にお会いするのは半年ぶり以上になりますね。目の前に飛沫防止の透明ビニールがあるから、今日は、鼻息の荒い安川さんの熱も防げるかも(笑)。でもいつもながらの強い要望で今回はワム!ですね。

―― はい! 郷太さんもライナーノーツ寄稿しているワム!『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』の発売を記念して、今回はそのアルバムの収録曲から連載テーマを1曲選んでもらうことになりました。

西寺 反響も大きくてめちゃくちゃ嬉しい毎日です! 僕はワム!の曲のことを話すのは何回でも嬉しいけれど……この連載では、「アイ・ウォント・ユア・セックス」 「ラスト・クリスマス」とこれまでもジョージ・マイケルやワム!の曲をテーマにしてきたから、今回のお題のフリはある意味選びやすかったかも。


第28回 ワム!「恋のかけひき(Everything She Wants)」【前編】

ワム!
『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ』
2020年11月11日発売
SONY MUSIC



―― 事前に『ファンタスティック』(’83年)『メイク・イット・ビッグ』(‘84年)『エッジ・オブ・ヘヴン』(’86年)のワム!のオリジナル・アルバムから1曲候補をあげてください、とお願いしたんですよね。結果的に『ジャパニーズ・シングル・コレクション』とリンクすると思っていましたから(笑)。

西寺 『ファンタスティック』からは「クラブ・トロピカーナ」。『メイク・イット・ビッグ』からは「恋のかけひき」(以下、原題「Everything She Wants」)。『エッジ・オブ・ヘヴン』からは「アイム・ユア・マン」を選びました。そしたら、安川さんが、それじゃ「Everything She Wants」にしましょうって。

―― それは、郷太さんが「Everything She Wants」が、このIt’s a Pops連載1回目のジョージ・マイケル「アイ・ウォント・ユア・セックス」、延いてはアルバム『フェイス』に繋がる重要な曲です!って言うから……

西寺 結論を先に言って過去を遡るのは今流行りの『鬼滅の刃』スタイルですね(笑)! というか本当に、この曲を自分でも怖いくらいに好きなだけなんですけど(笑)。

―― 大丈夫です。その答えにたどり着くまでのプロセスの長さと濃さがこの連載のウリですから(笑)。この時点で[前編][後編]の書きわけも覚悟してますからね。

西寺 なるほど(笑)。では、ここで、あらためてワム!の歴史を振り返りましょう。彼らの活動期間はわずか4年なんですが、その期間にワム!が発表した作品が何曲あるかを知ると多くの人はビックリするんですよね。どれくらいかわかります?

―― 考えたことなかった。4年か……40曲ぐらいですかね?

西寺 3曲のカヴァーを含むたった22曲なんです。オリジナル曲だけに絞るとわずか19曲。そのうち11曲がシングルとしてリリースされ『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』にも収録されています。だから、さっき安川さんが言った「結果的に『ジャパニーズ・シングル・コレクション』とリンクすると思った」というのは必然でもあるんです。

―― 意外と少ないんだ。そっか、ワム!のアルバムって平均して8曲入りでしたしね。

西寺 だから、『ジャパニーズ・シングル・コレクション』を今回ゲットした人のなかには、気になって過去のベストを調べて「同じような曲ばっかり入ってるじゃん」って思うかもしれないけど、そもそも素材がそれしかないんですよ(笑)。

―― それにしてもオリジナルが19曲とは驚きです。

西寺 本当の驚きはそのヒット率です。野球に例えると異常なまでの打率の高さですよね。最初だけちょっとバントみたいなのありましたけど、スタメンになってからは全打席出塁、場外ホームラン級もズラリみたいな。それも質がハンパじゃないんですよ。そのことを今回あらためて実感しました。『ジャパニーズ・シングル・コレクション』ライナーを発注してくれた佐々木さん(ワム!担当ディレクター)に声をかけて頂き、嬉しいことにスタジオの国内盤マスタリング作業に立ち会わせてもらいました。

―― へぇー。

西寺 リマスタリングは鈴江(真智子)さんというベテランの方。僕はマスタリング・エンジニアが自分よりもすごい能力を持っているって基本的にわかっているからNONA REEVESやプロデュース業の場合も、人は選びますが、任せたら自分からウダウダ言わないようにしているんですけど。今回やっぱり鈴江さんが素晴らしいなぁと思ったのは、色々試行錯誤した上で、’86年解散時に発表したベスト『ザ・ファイナル』の音が結局一番いいってわかった時点で、「その音で行きましょう!」って。当時のままって。超プロじゃないと選べない選択というか。

―― 究極の選択。

西寺 そう。なんか欲が出て足しちゃうこともあるじゃないですか。料理だったら、自分の好きな味を出したいから、ちょっと塩をふったり、醤油を垂らしたくなっちゃうんですけど、それをしない。する必要がないとプロとして判断されたんですね。リマスターって音の「変化」「進化」を楽しむような部分もあるんですが、あくまでも元よりも「良くなる」場合に限るんです。ワム!は、かなり繊細なバランスの上で成り立っているミックスだなと再認識しました。言い換えればそれだけ’86年の『ザ・ファイナル』の音が完璧ということ。ジョージ・マイケルが作った最後のワム!のマスター・サウンドは20年以上どころか、34年経った今でもクオリティの高さを保ち続けているという事実に、ソニー・ミュージックスタジオで驚愕しました。

―― 素晴らしい体験でしたね。

西寺 本当に。’86年時点でアナログ・レコードに代わる新しい再生メディアとして主役になったいたのがCD。でもそのCDにどれくらいの容量を入れるかってみんな迷ってた時期なんですよね。その時点でのCDというデジタル特性を活かしたミックスとか、優れた音質を完成させているジョージ・マイケル・チームの仕事は、34年の時を超えて、Blu-spec CD2に落とし込む時に、そのまま生かされるんですから、これはすごいことですよ。ジョージ・マイケルっていう人の異能ですよね。





WHAM! 「Wham Rap(Enjoy What You Do?)」 Official Video(1982)


―― そのあたりの非凡さはデビュー当時から際立っていましたよね。

西寺 デビュー・シングルが「ワム・ラップ!」(’82年)ですからね。最初に白人でラップやったものの周囲から「なんでお前そんなことしてるの?」ってバカにされたりして。でも、この斬新なラップ・ナンバーをまだ18歳ギリギリの、’82年6月に彼は発表していて。マイケルの『スリラー』が’82年のクリスマス・シーズンなんで、それよりも早いアプローチ。Run D.M.C.の「ウォーク・ディス・ウェイ」やビースティ・ボーイズよりも4年くらい早い。『ジャパニーズ・シングル・コレクション』にも収録された「ワム・ラップ!」7インチ・シングル・ヴァージョン、別名ソーシャル・ミックスは、ヒットすることなく当初は失敗に終わったんですけど、先見性とチャレンジはまさに脱帽です。

―― ワム!が白人で初めてポップ・ミュージックのフォーマットにラップを乗せたという事実はそのあとのアイドル・ポップ・デュオとしての大成功の陰に隠れてしまった印象ですね。

西寺 あ、これは『ジャパニーズ・シングル・コレクション』のライナーにも書いてたんですけど。韓国のBTSの「Dynamite」が全米1位になったじゃないですか。ミュージックビデオのなかでメンバーがマイケル・ジャクソンのようなダンスをしてるんですよ。インスパイアしているのは一目瞭然で。レコード・ショップのシーンではメンバーのRMがラップする後ろのレコード棚に『ファンタスティック』が目立つ位置で映ってるんです。嬉しすぎましたね。明らかにそこに異人種、国籍の違う者が「ダンス・ミュージック」と「ラップ」で新たな音楽世界を切り開いた先人、ジョージ・マイケル(ワム!)へのリスペクトを感じたので。後ろのほうにもボーイズⅡメンとかも見えるけれど、『ファンタスティック』はワム!ですよってわかるように映り込んでくる。最初の歌い出しAメロを歌うメンバー、ジョングクの部屋にはビートルズ、デヴィッド・ボウイ、クイーン、AC/DCらのポスターが貼ってあるんです。






BTS 「Dynamite」 Official Video(2020)


―― さすが、よく観てますね。

西寺 これは僕の見立てですけど。60年代のビートルズもアメリカの黒人音楽に憧れて、チャック・ベリーとかリトル・リチャード、エルヴィスのカヴァーをしたり、ハンブルクで下積み時代も経験。徐々にオリジナル楽曲を作る能力を発揮し、港町リバプールからロンドンを経由して世界を制覇した。下手だとか、うるさいとか、ゴーホームとか言われながら、アメリカ本国では一旦下火になりかけていた「ロック」をイギリスという外側から改めて再定義した。デヴィッド・ボウイもイギリスのグラム系ロックアーティストとしてブレイクするけれど、どんどんダンス・ミュージック、黒人音楽を体に入れて、『ヤング・アメリカンズ』(’75年)を経て『ステイション・トゥ・ステイション』(’76年)ではあの『ソウル・トレイン』に出演。そして80年代に入るとナイル・ロジャースに超接近し『レッツ・ダンス』(’83年)に行き着き、初の全米制覇。

―― (ニヤリ)

西寺 ちょっと戻って’78年にはそのナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズのシックの「グッド・タイムス」があって、シュガー・ヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」(’79年)の衝撃があって、その流れの延長、というか実質的に大きな影響を受けたベースラインの再解釈によってクイーンの「地獄へ道づれ」(’80年|原題:Another One Bites the Dust)が完成。マイケル・ジャクソンの勧めもありシングル・カットしたら大爆発、彼らもついに初の全米制覇。ギタリストのブライアン・メイや、ドラムのロジャー・テイラーは「地獄へ道づれ」に大反対していたようですね。ただ、それまでのクイーンの歴史、ロック・バンドの歴史を考えたらいきなりのダンサブルなメタモルフォーゼへの抵抗感は当然のような気がします。それでもそれまでにないカッコ良さに仕上げた二人は凄いですが。

―― (ニヤリ、ニヤリ)

西寺 AC/DCもスーパー・ダンサブルなバンドだと僕は思ってるんで。圧倒的なリフ・ミュージック。ヘヴィなギターとある種ヒップホップ的要素も含有してるモンスター・グループ。そういうリズム革新を成功させたレジェンドのポスターが張られた部屋で、マイケル的な仕草も踏まえて歌い踊るジョングク。そして、よりラップに純化したRMは、『ファンタスティック』が面出しされた80s、90sレコード・ショップでラップを決める。つまりイギリスやオーストラリアのロック・バンド、ソウル・フリーク、部外者と思われた彼らが外からアメリカ音楽を変えた歴史を、今の自分たちの立場と重ね合わせている。そんな「Dynamite」が韓国初の全米1位ですから。

―― それもビルボードHOT 100では珍しい1位→1位→2位→2位→1位→2位→2位の返り咲きの非連続3週1位ですからちょっと興奮しましたよ。

西寺 チャート・マニアの安川さんとしては、注目点はソコですか(笑)。レコード・ショップの棚に入っているのが、もし代表作『メイク・イット・ビッグ』だったら「異人種ラップのパイオニア」という意味は消されてしまうので、あえてファースト『ファンタスティック』を置いたところがスゴイですよ。BTSメンバーの意志なのか演出家の計らいかはわからないけれど「Dynamite」の映像からのメッセージは、世界中の世代を超えた音楽ファンに届いていると思います。





WHAM! 「Club Tropicana」 Official Video(1983)


―― 郷太さん、『ファンタスティック』から選んだ1曲は「クラブ・トロピカーナ」でした。

西寺 「バッド・ボーイ」で少し不良ぶったけれど、結局、お金も入ってモテたら最高!俺たち成功したぜ、Yeah! Yeah!みたいな開き直った「クラブ・トロピカーナ」のビデオは最高ですよね。イビサ島の高級リゾート、パイクス・ホテルのプール・サイドでのメイン撮影。ジョージとアンドリューが扮するふたりのパイロットとふたりの美人なCA。ちょっとお金持ちな若い男女の休暇と恋の予感……楽曲、映像ともに80年代ポップスを象徴する傑作だと思っています。

―― ふたりの白人と黒人の美人CAは、当時ワム!バック・ヴォーカルを務めていたシャーリー(ペプシ&シャーリー)とのちにスタイル・カウンシルを経てポール・ウェラーの奥方となるD.C.リーでしたね。

西寺 ライナーノーツでは字数の制限もあったので書かなかったんですけど。シャーリーとD.C.リーはそもそもワム!のなかではほぼ歌ってないんですよ。「クラブ・トロピカーナ」の印象的なヴォーカル、最後の「クール、クール」もジョージの多重録音なんでね。イメージは「四人組」くらいに鮮烈だったんですけど。そんなこともあってか、D.C.リーはワム!よりもうちょっと本格的に音楽やりたいと言って、ワム!をやめて、歌手としてスタイル・カウンシルに入って、ポール・ウェラーと結婚するんですけど。

―― この頃、ポール・ウェラーはワム!のことを批判してましたよね。

西寺 ポール・ウェラーのような筋の通った真面目なミュージシャンから見れば「クラブ・トロピカーナ」でジョージが履いていたピチピチの白いビキニと、ワム!が放つメッセージの一貫性のなさに呆れてバカにしてたんですよね。それまではパンクの精神って、弱者として政府に文句を言う立場でポール・ウェラーなんてまさにそうだったと思うんですけど、でもジョージ・マイケルはアプローチが違うというか、頭がいいと思うんですね。

―― ほう。

西寺 「ワム・ラップ!」の時から、サッチャーを批判してるというよりは、いやいや、わかりましたと。失業率が高い、今景気が悪い、結局イギリスの政府が失業保険を出してくれるなら、僕らそれをしっかりもらって踊りに行くんで、という批判ともまたちょっと違うスタンス。「クラブ・トロピカーナ」も、だってあなたたちお金持ちになって、成功したら嬉しいでしょ? こんなにかわいい女の子もいて、こんなに美味しいお酒を飲んで……

―― そのままプールに飛び込んで(笑)。

西寺 そう(笑)。こっちの立場になったらそれはそれでいいと思いますやんっていうね。でも硬派ミュージシャンからは「お前ら、若者や労働者の味方じゃないのか!」みたいな。ジョージとアンドリューからしたら、いやいやこれギャグですやんっていう(笑)。最初っから偏見して真剣に怒って、あれをギャグとしてとってへん方がおかしいでしょ!って。そういうパンク特有のある種生真面目さの裏をかいたメンタリティというか、次は短パンで歌っちゃえ!みたいなひねくれてふざけた悪戯、ジョージとアンドリューの「しょうもなさ」が、僕は大好きなんですよ。まだ彼ら10代ですしね。





WHAM! 「Wake Me Up Before You Go-Go」 Official Video(1984)


―― 短パンは「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」(’84年)ですね。

西寺 そうです、そうです。だから、なんだろう、ワム!のやってることって、すごくわかりやすくて、めちゃくちゃわかりづらいっていうか。’84年夏に「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」で初の全英1位に輝き、その年の秋に行われたバンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」のレコーディングの時にジョージって居並ぶトップ・ミュージシャン達にめちゃめちゃ馬鹿にされるんですよ。デュラン・デュランだったりカルチャー・クラブとか、アート・スクール出の、ファッション業界とリンクしてるような若者にもバカにされ、まあアイドル的でダサい象徴としてのワム!って。

―― でもわかりやすさい部分がワムの世界制覇につながる要因なわけですよね。

西寺 わかりやすくしていたのはアンドリュー・リッジリーの存在ですよね。木崎賢治さんっていらっしゃるじゃないですか。沢田研二さんとか吉川晃司さんとかをプロデュースしたナベプロの天才プロデューサー。TRICERATOPSとかBUMP OF CHICKENもやってたり、槇原さんとか。この前、お話しする機会があったんですけど。「木崎さんの思ういい歌詞を書く人の条件って何ですかね?」って聞いたら、「それは友達の少ない人だよ」って言ったんですよ。なるほど、人一倍感受性が豊かで誤解されることが多い人かもしれないと思ったら、ジョージ・マイケルの顔がパッと浮かんだんです。

―― ジョージは友達が少なかった?

西寺 いや、幼なじみや地元の仲間との繋がりはもちろん深いものがありますけどね。不器用なのは事実だったと思います。ただ、ジョージには素晴らしい友達がひとりいたんです。アンドリュー・リッジリーという大親友が。例えるなら、SMAPや嵐、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック、BTSなど通常のボーイバンドがそのメンバー勢揃いでいるときの誰もかなわないような無敵の空気、友情や宿命で繋がったチーム感ってあるじゃないですか。ジョージ&アンドリューのワム!には、その最強のボーイバンド感が存在したんです。後々の活動や個人のパーソナリティを考えてもそれは「ジョージ・マイケル」の個性とはかけ離れているもので。むしろ、アンドリューっていうのは通常4人や5人いるメンバーで醸し出すヤングでフレッシュなやんちゃ感をひとりに凝縮してるとんでもない個性なわけですよ。何にもしていないからって、あまり認められてないんですけど(笑)。宣伝能力も高く、拡散力もあり、唯一ジョージに意見を言えた存在なわけですし。そのアンドリュー・リッジリーっていう人の存在感が爆発していたのが『ファンタスティック』までですね。

―― 共作もありましたよね。

西寺  初期楽曲「ワム・ラップ!」「クラブ・トロピカーナ」、それと「ケアレス・ウィスパー」はふたりの共作なんで、本当に一緒にコミュニケーションしながら作った時代ですね。もっと言えば、「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」=「Wake Me Up Before You Go-Go」のタイトル案はアンドリューですからね。寝ぼけて書いて(笑)。ふたりは友達から音楽活動をスタートしたわけで、どっちかが才能ある、ないってわかるまで多分1年くらいかかったと思うんですよね。それで気づくわけです。アンドリューからしたら、お前の作ってくる曲、全部ヤバくない?って。

―― 劣等感が生まれてくる。

西寺 アンドリューってすごいなって思うのはお金の配分も変わってくるから当はもっと自分が関わった曲をアルバムにも入れたかったはずなのに、お前の作った曲の方がいいんやから、それでええやんって。逆に劣等感というより、全部任せる、ジョージ、おまえは天才だと。その判断出来るのが凄いんですよ、あの歳で。さっきの鈴江さんのマスタリングの話じゃないですけど、最終的に曲を足す必要がないって決断を出来たのもアンドリューだけですから。結果、その決断が「Everything She Wants」という名曲を誕生させる要因にもなるんですけどね。(【後編】に続く)


聞き手/安川達也(otonano編集部)






WHAM! 「Everything She Wants」(1985)



第28回 ワム!「恋のかけひき(Everything She Wants)」【前編】

WHAM!
「Everything She Wants」


Release:3 December ,1984(UK)
Recorded:Paris/London 1984
Label:Columbia

Songwriter:George Michael
Producer:George Michael

Lead and Backing Vocals, All Keyboards:George Michael


 ワム!の2ndアルバム『メイク・イット・ビッグ』からの3rdシングルで、本国イギリスでは「ラスト・クリスマス」の両A面シングルとして発売され’84年12月15日付け全英チャート最高2位(年間6位)を記録(1位はワム!も参加したバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」)。アメリカでは「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」「ケアレス・ウィスパー」に続き’85年5月25日付けで全米1位(年間25位)を記録した。1枚のアルバムから3曲が全米チャートのトップを飾るのは、ビー・ジーズの『サタデー・ナイト・フィーヴァー』以来7年ぶり、80年代に入ってからは初の快挙だった。日本発売されたシングル盤(写真)には、カップリングの「消えゆく想い」に日本ファンへのメッセージ音声がプラスされていたことで話題となった。





第28回 ワム!「恋のかけひき(Everything She Wants)」【前編】

ワム!『ジャパニーズ・シングル・コレクション ─グレイテスト・ヒッツ─』
スペシャルサイト


プロフィール

西寺郷太
西寺郷太 (公式サイト http://www.nonareeves.com/Prof/GOTA.html)
1973年東京生まれ京都育ち。早稲田大学在学時に結成しバンド、NONA REEVESのシンガーとして、’97年デビュー。音楽プロデユーサー、作詞・作曲家として少年隊、SMAP、V6、KAT-TUN、岡村靖幸、中島美嘉、The Gospellersなど多くの作品に携わる。ソロ・アーティスト、堂島孝平・藤井隆と のユニット「Smalll Boys」としての活動の他、マイケル・ジャクソンを始めとする80年代音楽の伝承者として執筆した書籍の数々はべストセラーに。代表作に小説『噂のメロディ・メイカー』(’14年/扶桑社)、『プリンス論』(’16年/新潮新書)など。

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