Sony Music Direct Presents otonano

●LIVEレポート

“玉置浩二 CONCERT TOUR 2018 ~60’ CARNATION~”前半ハイライト。
60歳・玉置浩二、絶唱! 2700人が♪Happy Birthday大合唱で祝福した大阪の夜。

 近年はライヴを音楽活動の中心とし、追随を許さない最高峰の繊細かつ圧倒的なボーカルを直に観客に届けている玉置浩二。昨年はソロ活動30周年のツアー、また35周年となった安全地帯でもステージ後方まで隙間なく観客で埋め尽くされた360°解放空間で敢行された日本武道館にて圧巻のライヴを披露した事も記憶に新しい。そして今年2018年もオーケストラと共演する至極のコンサート“KOJI TAMAKI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018「THE GOLD RENAISSANCE」”は惜しみない拍手喝采のなか大盛況のうちに幕を閉じた。さらに昨年リリースされた安全地帯のオリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクションに続き、玉置浩二がソロ名義でこれまでに発表したオリジナル・スタジオ・アルバム、全13タイトルが初の紙ジャケット仕様、そして、より一層原音に忠実なSHM-CD(ユニバーサルミュージックから発売の2タイトル)とBlu-spec CD2(ソニー・ミュージックダイレクトから発売の11タイトル)で8月15日に一挙再発売された。

 そんな充実のアーカイヴ作品も話題のなか“玉置浩二 CONCERT TOUR 2018 ~60’CARNATION~”が8月17日、市川市文化会館大ホールからスタートした。全国29か所31公演予定、すでに各会場で感動の渦を巻き起こしている最新ソロ・ツアー。前半のハイライトともいえる大阪・フェスティバルホール公演が行われた。2日連続公演の初日となった「9月13日」はくしくも玉置浩二の60回目の誕生日。観客2700人が祝福したスペシャルなステージをレポートする。

 定刻から遅れること5分、客電が落ち、やさしいオルゴールに導かれるようにバンド・メンバーが登場し、玉置浩二はステージ中央までゆっくりと進むと背中からライトを浴びる。光のなかに主人公の等身が浮かびあがるが、どうやらその明かりはステージ側から見れば客席を照らすためのサーチライトなのかもしれない。期待に胸を膨らませた観客の顔に光が当たる。玉置浩二が観客を抱きしめるように大きく手を拡げると場内は大歓声に包まれる。そして、立ち上がりから現役最高峰のひとりに数えられる繊細かつ圧倒的なボーカルを聴かせる。日本音楽シーンの頂点に立つ孤高のアーティストが目の前にいる。その事実に、はやくも身震いが止まらない。

 ステージは2部構成。前半は比較的じっくりと聴かせる曲が並ぶ「静」。『カリント工場の煙突の上に』(1993年)『JUNK LAND』(1997年)『ニセモノ』(2000年)『PRESENT』(2006)『GOLD』(2014)などのアルバムに収められた楽曲のイントロが流れるたびに客席からため息がこぼれる。後半は玉置浩二の代名詞となったヒット曲や安全地帯の代表曲まで全キャリアを網羅したいわば「動」。リズムを強調する斬新なアレンジによって聴き慣れたメロディがさらに際立つマジックに客席が揺れる。バックメンバーによるDJプレイでは観客が総立ちとなり喝采を送る。「フェスティバルホール」「北新地」「御堂筋」「大阪」と散りばめられた歌詞がさらなる盛り上がりを演出したことは言うまでもない。

 近年の玉置浩二のライヴにはMCがない。「メッセージはすべて歌のなかにあります」。この夜もそんな言葉も彼はもちろん発していないが、ステージ上から伝わってくる歌うことへの集中力が、客席の洞察力を呼び起こす。“日本一の歌唱力”とうたわれる玉置浩二の非凡な歌声に酔いしれながら、受け手が自由に音楽風景を描いていくのは充分過ぎるほどの贅沢な時間だろう。だからこそこのツアーが今年5月に亡くなったお母さんに捧げられた内容になっていることは演奏曲から想像に容易い。お母さんから産まれた玉置浩二は9月13日で60歳となった。感謝を込めて60本のカーネーション=~60’CARNATION~。本編終盤で、ニヤリと笑みを浮かべた玉置浩二に誘われ、キーボード演奏に合わせた2700人の♪Happy Birthday To Youの大合唱が巻き起こる。そして玉置浩二は天を見上げていた。

 ツアー初日の市川市文化会館のステージにはライヴのはじめから玉置浩二の横に誰も座っていない椅子が置かれていた。演奏後に「終わったよ」と言いたげに椅子の背中を優しくポンポンと触る姿が印象的だったが、あれは亡くなったお母さんのために用意された席だったのだろう。今夜の大阪のステージにはもう特等席は置かれていない。ステージから違う風景が見え始めているのかもしれない。終始1曲1曲歌い終わるたびに穏やかな表情を浮かべていた玉置浩二。彼が最後にポンポンと手をおいたのは、この夜も最高の音色を聴かせてくれた世界一美しいギターと言われる愛用のBUSCARINOスターライトブルーだった。“玉置浩二 CONCERT TOUR 2018 ~60’CARNATION~”は、11月18日の東京国際フォーラム・ホールCまで続いていく――