2017年11月15日発売!

「HIDEKI NHK Collection 西城秀樹~若さと情熱と感激と~」

「HIDEKI NHK Collection
西城秀樹~若さと情熱と感激と~」

『HIDEKI NHK Collection 西城秀樹 ~若さと情熱と感激と~』が発売中だ。ベテランプロデューサー・尾形靖博の忘れられない初期衝動、まさに情熱と感激をDVDに刻印した渾身作。衝撃の出会いから話を聞いてみた。

―― 3枚組DVDボックス『HIDEKI NHK Collection 西城秀樹 ~若さと情熱と感激と~』が発売されました。担当の尾形さんから、あらためて作品の内容を紹介してもらえますか。

尾形  1974年からNHKが保存する西城秀樹の歌唱シーン123曲を収録しています。『紅白歌合戦』『レッツゴーヤング』『ビッグショー』『歌謡コンサート』などNHKの歴代歌番組から厳選していて、嬉しいことにその内117曲が今回初めて商品化となりました。

―― 見どころが多そうですね。

尾形  多いですよ! 目玉の『紅白歌合戦』は全18回出場中16回の歌唱シーンを初収録しています。1974年の大晦日、初出場、白組トップバッターとして登場した「傷だらけのローラ」はもちろん入ってます。1979年は白組出場者がみんなで応援しながら見守る中での「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」白組優勝祈願特別ヴァージョンは、生放送の時間合わせのためテンポも早いので大注目です。それから、『第1回ヤング・歌の祭典』では他局のドラマ収録での左腕骨折後、右手と足でスタンドをあやつりながら歌う「この愛のときめき」。それと、『レッツゴーヤング』からは「ブーツをぬいで朝食を」の有名なライターパフォーマンス、発売したシングル盤とは歌詞が違う「ギャランドゥ」など……っていうか見どころだけで1時間は喋れますよ、ホントに(笑)。

―― そんななかで、ヒデキの『紅白歌合戦』初登場シーンは長らく“伝説”と言われていましたよね。

尾形  (グラスを置いて)はい! そのフリを待っていました。(またグラスを持って一気にビールを飲み干して)1974年、昭和49年ね、大晦日。あの夜はね、僕は忘れられないんですよ。いまだにブラウン管に映った光景をしっかりと覚えてるから。こっちはね、岡山の片田舎で高校2年ですよ。『レコード大賞』の放送後の興奮のままチャンネルをNHKに変えて、家族3人で紅白のスタートを見守るわけで。

―― 昭和のお茶の間。コタツでみかんですね。

尾形  それはここでは重要じゃないの! ま、たぶん入って○○○飲んでたと思うけどね(笑)。

―― 失礼しました。

尾形  どっちがトップバッターだったのかは正直忘れちゃったんたけど(笑)、初出場同士で紅組が山口百恵「ひと夏の経験」、西城秀樹「傷だらけのローラ」。それでね、秀樹はアラン・ドロンよろしく快傑ゾロの衣装で登場したんですよ。アイドルなのに顔を隠してちゃってる。えーーそのまま歌うの!? って、大騒ぎですよ。あ、我が家がね。マントを脱ぎ捨て、アイマスクを外していくヒデキがまたカッコいいわけですよ。それだけで充分な驚きだったんだけど、今度は♪ロォーラァーの最大見せ場で上と下から煙が吹き出してくるわけですよ。白いのよ。白!

―― 白煙演出ですからね(笑)。

尾形  いやいや、笑いごとじゃないのよ。それは40代のあなたはモノごころ付いた時からそういう仕掛けをフツーにテレビで観てきたから言えるわけでね。当時の僕らは一瞬何が起きたかわからないわけですよ。大変!ヒデキが煙に巻かれてるよ!!って具合。だってそれまでそんな演出を僕らは観たことがなかったんだから。これが『紅白歌合戦』史上初のCO2ボンベでの白煙演出、それも手動仕掛けということは、その後に知るわけで、あの時にテレビの前で受けた衝撃は計り知れないわけですよ。もういくつ寝るとお正月なんじゃないわけよ。えらく興奮してそれどこじゃなかったもんね。

―― テレビが今と比較にならいほど圧倒的な影響力を持っていた時代ですよね。

尾形  そういうこと。だから新学期を迎えても秀樹の紅白の話題は教室でも持ちきりだったわけ。普段はフォークだ女性アイドルって言っている男子もさすがに口にせざるを得ないほどのインパクトだったわけですよ。好むと好まざるとに関わらずね。

―― 以前のインタビューで尾形さんは南沙織さんのファンだったと言ってましたもんね。

尾形  そうですよ。ヒデキさんが「恋する季節」でデビューしたのは1972年3月。でもまだチャートのトップ20にも入らなかった。その頃は、1971年同期デビューの小柳ルミ子、天地真理、南沙織の“新三人娘”の女性アイドルが大人気だったの。男性“新御三家”は、野口五郎さんが先に売れていて「めぐり逢う青春」で1972年の紅白に初出場。翌年に郷ひろみさんが「男の子女の子」で紅白初出場。紅白に関していえばヒデキさんは初出場が遅れたけれど、“新御三家”ではいちばん最初にチャート1位を記録しているんですよ。「ちぎれた愛」「愛の十字架」で連続首位でした。

―― 手元のチャート資料の1位記録を見ると。1973年9月7日付-9月17日付(2週)「心の旅」チューリップ/9月24日付-10月15日付(4週)「ちぎれた愛」西城秀樹/10月22日付-12月10日付(7週)「神田川」かぐや姫……こういう時代のヒットだったんですね!

尾形  わかりやすいでしょ。前回の『十年フォーク』のインタビューでも言ったと思うけど、男の子はフォークギターを手にするのがカッコいい時代なんですよ。だから当時のアイドルとしてはあり得ない180cm超えの長身で、ワイルドで、カッコよくて、歌もうまくて、アクションも完璧な秀樹さんを教室の“公の場”でファンだって言えないのよ(笑)。女の子はみんな『明星』『平凡』のページをめくってキャーキャー言っているわけですよ。僕は南沙織さんを見たいから買いたいんだけど、やっぱり恥ずかしくて買えないんだよ。ほら、昭和の男として。わかる?

―― わかりません(笑)。

尾形  時代だね(笑)。ま、いいや。それでね。間のいいことに隣の席の女の子が熱心な『明星』『平凡』読者だったもんだから、「うるせーなー、ちょっと俺にも読ませてみろ」って(笑)。本気で南沙織を見ながら、偶然を装って“新御三家”もチェックするわけ。それで秀樹さんのことも詳しく知るようになっていくの。授業中にね。“ワイルドな17才”って、こんな感じかって。

尾形靖博・ワイルドな17才・憧れ①

―― ヒデキは嫉妬に近い存在でもあったわけですか。

尾形  確かにヒデキみたいなカッコよくなりたかった。じつは岡山の中学生弁論大会で優勝したんだよ。それから、ちょっと女の子にも注目されるようになったからラッキーだったかなぁ。それで中学3年のときに、お付き合いをした子がいましたね。その子にももっと好かれたたいからヒデキのようなワイルドな感じになりたいなーって。でもその子に「尾形さんはヒデキというよりも三善英史さん系」って言われて、結構ショックだった(笑)。あ、演歌歌手の三善英史さんも優しい感じの人なのよ。だから嫌じゃないんだけど、ホラ、ね。あ~その子だけは死ぬまでに1回会いたいんだよね。「ちぎれた愛」じゃないけどさ。

―― 「ちぎれた愛」も当時はインパクト強かったんですね。

尾形  衝撃的だったよ。曲の途中からいきなりセリフが入ってくるんだもん。たまげたね。「僕の気持ちを信じて 君をはなすもんか すきだ すきだ すきなんだよ〜」っていう言葉なの。当時でセリフ入りって言えばもっと子供の頃に聴いた加山雄三さんの「幸せだな~」ってゆったりしたものだったからね。それが「すきなんだよ~」っでストレートに叫んでいるわけだから。めちゃくちゃ熱いわけですよ。えーっ!みたいな。ホントにびっくりしたよ。いったい誰に言ってるんだよ!って。ところが、年末の紅白に出場しなかったんだよね。「なんでヒデキ出ないの?」って子供心に悶々としていたところで、翌年の大晦日で満を持してあの「傷だらけのローラ」だもん。もう3年分のパフォーマンスだよね。やっぱり、ヒデキ、スゴい!!って。

尾形靖博・ワイルドな17才・憧れ②

―― いま“伝説”の意味がわかったような気がしました。

尾形  あ、そう。それならよかった。だから今回(当時の事務所の)芸映さんとNHKさんからこのDVD企画の話を頂いた時に、紅白初出場のシーンの映像有無を真っ先に確認したんですよね。そしたら「NHKに残っています」って言うじゃないですか。「是非やらせてください!」って、もう涙が出るほど嬉しかった。そこを原点に企画を一緒に進めていきましょう、と。今回、NHKの制作スタッフに感謝しているのは、選曲を自分と事務所の意見をとりいれてくれたことですね。写真もパッケージデザインも(現事務所の)アースコーポレーションさんから現存写真を借りて、その中で、これがいい、あれがいいって選んでね。

―― 映像は膨大な量だったんじゃないですか。

尾形  すごい量でしたね。耳が痛くなるほど何回も見て大変だったけれど、充実した時間でしたよ。芸映さんとアースさんとこれはダメダメ、これは絶対に収録って○✕を付けていってね。結局、2割ぐらい削って123曲となりました。

―― ご自身の懐かしい記憶をめくるような作業でもあったんじゃないですか。

尾形  これ観たことあるっていうシーンはたくさんありました。ビデオで録画する時代じゃないから一度の放送シーンが脳裏に焼き付いているんでしょうね。「この愛のときめき」(Disc1収録)で右手と足でスタンドをあやつって歌うシーンは観ているけれど、怪我の元となったドラマ『寺内貫太郎一家』は観ていなかったなぁと思っていたら、野球中継を観てたんだよね。同じドラマでも『時間ですよ』はチェックしてた。女性の裸が出てくるから。寺内貫太郎は裸はなかったからね(笑)。

―― 40代の僕はヒデキさんと言えば「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」。今回収録されている紅白のシーンも観ていたはずですが、あんなにテンポが速いと思わなかったです。

尾形  ヒデキ最大のヒット曲だから全世代的にもそうかもしれませんね。紅白歌唱シーンは、生放送で時間が押しちゃったのか、短縮のために演奏が速いんだよね。でもパフォーマンスは抜群。本当はちゃんとしたテンポでリハもしているわけですよね。でも、おそらく歌唱直前に速いテンポで行くという耳打ちするレベルですよね。あれが本当のプロ。その場で全部が見えているんだよね。

―― ペンライトもレーザー光線の多用もヒデキさんが日本初なんですよね。テレビを付けたらいつもブラウン管にヒデキがいた。そんな存在でした。

尾形  人気はほんとにすごかった。そういえば’77、’78年だったかな。学生時代ね。タレントさんとガラス越しにキスができるっていう面白いテレビ番組があったの。うちの大学の放送研究会から10人出たのね。ゲストが木之内みどりさん。ガラス越しにキスができるのは最後に残った人。木之内みどりさんがその場で判断ボタンを押して落とされていくの。第一印象でボタンを押されると、何もしゃべることがなく、番組が始まる前のオープニングの映像の手前で落とされちゃうわけよ。「はい、第一印象でダメだと思う人のボタンを押してください」って(笑)。僕のひとつ上の先輩が落っこったのよ。それからどんどん落ちていくのね。残り2、3問題くらいで、最後の4人に残ったのよ。ラッキーだよね。次の問題でまたひとり落ちますっていうお題で。「木之内みどりさんとあなたは映画に行きました。映画をみたあと、あなたは何をしますか?」って。これはもうウケようかなと思って、「映画を見たあとに……はい!ブーツをぬいで一緒に朝食をとります!!」って言ったんだよ。ヒデキさん絶頂期、大ヒットしてたから。でも、それで木之内さんにボタンを押されて落とされたんだよね。そうそうこの時ね、最後まで残ってガラス越しにキスしたのがふたつ上の先輩の野崎昌一さん。元フジテレビのアナウンサーで『3時のあなた』の司会(’80-’85年)もやってましたね。ちなみに「ブーツをぬいで朝食を」の前のシングルが、「ボタンを外せ」ですよ(ニヤリ)。

―― もう絶好調じゃないですか! 今年9月に退社後、節目となる最後のプロデュース作。もう思い残すこともないんじゃないですか。

尾形  いや~中3の時の彼女にはもう一度だけ逢いたいよね……だってさぁ…。

―― 違いますよ(笑)。ディレクターとしてですよ。

尾形  あ、ごめん、ごめんそっちね。高校生の時に受けた衝撃、あの映像を最後に担当としてこのDVDに関わることができて本当に嬉しいですよ。今回は一緒にお仕事させてもらった全ての方に心からの感謝以外なにものでもないですよ。

―― ファンはもちろんのこと、ヒデキさんご本人も喜んでくれるといいですね。

尾形  ヒデキさんは過去のことはあんまり振り返らないらしいですね。歌謡界の歴史を塗り変えてきた先駆者らしいですよね。この前、ファンクラブの会長さんから聞いたんですけど、ヒデキさん「このDVD僕もワンセットもらえるかな?」って言ったらしいんですよ。めちゃくちゃカッコいいじゃないですか。そういうところがスーパースター。永遠の憧れですよ。

―― 尾形さんの後任は?

尾形  あ、その質問待ってました! 80年代のヒデキなら絶対に冬でもシャツのボタンを外したギャランドゥ!なジプシー・後藤達也を指名だね! 言わずもがなヒデキさんを見習って「9999点」を目指して、さらにホップ・ステップ・ジャンプして欲しいよね。

インタビュー・文/安川達也 (otonano編集部)

写真/阿部清香 (otonano編集部)

2017年11月2日・都内某所にて取材

尾形靖博(おがた・やすひろ)

1980年、CBS・ソニーレコード(現Sony Music)入社。
ソニー・クリエイティブプロダクツにて文具一筋8年、レコードを売るはずが、シャープペンシルや化粧品を売ることとなった同期たちと共に、営業、宣伝、管理、資材部門を経験。何気なく使っていたシャープペンシルに3つの特許があることを知って驚き、文具の深さを知る。その後、CBS・ソニーグループ映像事業部に異動。 レコード営業、演歌制作部等を経験し、GTMusicからソニー・ミュージックダイレクト在籍となる。趣味は、昭和カラオケと競馬観戦。プロの歌手とスナックにカラオケに行って、その歌手が歌ったところ、騒いでいたお客さんたちが、だんだん静かになり、歌い終わったら全員が拍手喝采で、握手を求めてきた。歌手の凄さを目の前で観たことが、サラリーマン人生の宝物のひとつ。
2017年9月、ソニー・ミュージックダイレクト退社。現在、そのまま再雇用で残ってまだまだエンタメ人生謳歌中。

「HIDEKI NHK Collection西城秀樹~若さと情熱と感激と~」2017年11月15日発売!!

「HIDEKI NHK Collection 西城秀樹~若さと情熱と感激と~」
品番:DQBX-1225
価格:¥16,500+税
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