私が欲しいレコード

幻の名盤から架空の一枚まで。今聴きたい、今欲しいレコードを、各界のレコード愛好家のみなさまに、自由な発想で綴っていただきます。

第5回【Night Tempo】 プロデューサー/DJ
第5回【Night Tempo】 プロデューサー/DJ

「Not For Sale」がシティポップの代表的なサウンドを持っていて。
でもあまり知られていないから、ちょっともったいないなと思っているんです。



 “私が欲しいレコード”ということで、今回ぼくが選んだのは谷村有美さんのファースト・アルバム『BELIEVE IN』です。角松敏生さんのライヴでもバンマスを務めている本田雅人さんが谷村さんのライヴでもバンマスをやっていて、そこから入りました。ぼくは日本のポップスに入っているサックスが好きで、いい曲には絶対いいサックスが入っていると思っています。中でも本田さんのサックスが特に好きなんです。

 日本の歌謡曲やポップスをいろいろと買い漁っているなかで、まったく覚えていなかったんですけど、その中に谷村さんの3作目のアルバム『Hear』のカセットがあったんです。DJの選曲に悩んでいたあるときたまたま耳にした、そのアルバムに入っている「がんばれブロークンハート」がすごく耳に刺さって。アルバムの中にサックスがいっぱい入ってて、誰なんだろうって調べてみたら本田さんで。「あ、これは絶対いい」って思ったんです。そこで谷村さんについてもうちょっと調べて、いろいろ聴いてみたら、デビュー曲の「Not For Sale」が、今流行ってるシティポップの代表的なサウンドを持っていて。でも、シティポップの文脈ではあまり知られていないから、ちょっともったいないなと思っているんです。


谷村有美「Not For Sale」(シングル)


 『BELIEVE IN』には谷村さん以外の方が作詞・作曲している曲が多いんですが、この「Not For Sale」だけは詞曲ともに谷村さんが手がけていて。とてもかわいらしい歌詞なんですけど、描写がとても細やかで…たとえば、いわゆるシティポップだと都会的な愛とか、寂しいとか不倫とか、歌詞ではいろいろ扱ってるじゃないですか。でも、谷村さんの歌詞は元気でポジティブな歌詞が多くて、そのあたりもいいと思いました。

 谷村さんのアルバムでは、最初の4枚…『BELIEVE IN』から『PRISM』あたりが好きですね。全部しっかりお金かけてきちんと作られていると思うんですけど、自分なりには『Hear』までがいいサウンド。今聴いてもフレッシュですよね。でも、やっぱりお薦めするならファーストの『BELIEVE IN』かな。特に「Not For Sale」、デビュー曲でこういうの出すのって、それまでのアイドル的な女性ヴォーカリストの文脈ではまったくなかったと思うんです。あと、ぼくは音楽制作の専門家じゃないし、ただ自分のセンスだけ信じていろいろセレクトして聴いて感じた話ではあるんですが、この頃の谷村さんは自分に合ってる曲をちゃんと書いて、センスがすごくよかったなって思います。ほんとにデビューしたばっかりの情熱というか、音楽にとにかく時間かけてたと思うんですよね。


谷村有美『BELIEVE IN』(アルバム)


 ぼくは曲を選ぶときにカセットテープで最初から全部プレイしているんです。その中からいいものをセレクトしていて。日本の曲をもともとリアルタイムで知らないから、この歌が有名とか、アイドルだとかアーティストだとかも関係なく偏見なしにいろいろ聴けるようになったんじゃないかなって思っています。

 カセットの魅力って、カセットプレイヤーのヘッドによって音色がすごく変わるから、機械を選ぶ楽しさもあるんです。それでぼくはソニーのウォークマン®を100個以上集めました。歴代の機械でいろんな方がディレクション、プロデュースやってるからそれぞれ音の違いもあって面白いんですよね。もちろんレコードもプレーヤーや針によって変わってくるんですけど、その差よりもカセットテープのヘッドの差は大きい。だから聴く楽しさもいろいろ…っていう話をしていると、どちらかというと“私が欲しいカセット”になってしまうんですけどね(笑)。


インタビュー:中尾吉孝(otonano編集部)
文:鮎澤裕之(otonano編集部)
※このコラムはNight Tempoさんへのインタビューをもとにまとめたものです。






●Night Tempo(ナイト・テンポ)

80年代のジャパニーズ・シティ・ポップ、昭和歌謡や和モノ・ディスコ・チューンを再構築してフューチャ ー・ファンクというジャンルを生んだ韓国人プロデューサー/DJ。
2018年ミックス・テープ「Nighty Tape 86ʼ」をリリース。主に米国と日本を中心に活動。竹内まりやの「Plastic Love」をリエディットし欧米でシティ・ポップ・ブームをネット中心に巻き起こした。昭和のアーティストのカセットテープ・コレクターとしても知られている。

2019年4月2日に初のオフィシャル・リエディット作品『Wink – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』をリリース。
7月24日にはオフィシャル・リエディット第2弾『杏里 – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』をリリースし、28日のフジロックフェスティバルʼ19最終日に出演、レッドマーキーを本人リエディットによる昭和歌謡で盛り上げた。
11月8日には第3弾『1986オメガトライブ – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』をリリース、この作品を引っ提げソールドアウト5公演を含む全国6都市を周る来日ツアーを行い、日本各地をリエディットした昭和歌謡で沸かした。
2020年に入り、自身の誕生日2月14日に第4弾『BaBe – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』をリリース、同日に東京ドームローラースケートアリーナでリリース・イベントを開催。


Official Website: nighttempo.com
Twitter: twitter.com/nighttempo
Instagram: instagram.com/nighttempo
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Bandcamp: nighttempo.bandcamp.com
Soundcloud: soundcloud.com/ntreboot


最新リリース:


『BaBe – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』



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