西寺郷太 It's a Pops

NONA REEVES西寺郷太が洋楽ヒット曲の仕組みや背景を徹底分析する好評連載

第21回 ポール・ヤング 「プレイハウス・ダウン」(1984年)

第21回 ポール・ヤング 「プレイハウス・ダウン」(1984年)

―― さて郷太さん。今回の連載「It'sa Pops」のテーマ曲はポール・ヤングの「プレイハウス・ダウン」です。……というわけで、いま来日公演を一緒に観終えたばかりなわけですが(2019年7月2日、午後9時30分)。

西寺 この展開はまさに5月にボズ・スキャッグス来日公演を観たあとに「ロウダウン」を語った前回とまったく一緒ですね(笑)。公演場所もボズと同じくオーチャードホールというのは偶然なんでしょうけど、取材場所まで前回と同じお店とは(笑)?

―― それは、必然です(笑)!

西寺 ですよね(笑)。にしてもともかく、対象となるアーティストのライヴを観た直後にテーマにした楽曲の取材というのは興味深いですよね。その曲を通してアーティストの生き様を見ることが出来るし、いまのコンディションまで全部わかってしまう。むしろ、現在の姿や活動を体感した方がそのアーティストの本質が見えてくるとも言えますね。そういった意味で、ポール・ヤングの喉のコンディションが良いとはお世辞にも言えません。ただ、彼はとどまることなく今日まで歌い続けてきた。

―― はい。

西寺 スポーツ選手で言えば、「自分の最高の状態をキープ出来ないから」と引退する人が多いですけど、「どうしても好きなんだ」と続ける人もいる。ポールは後者なんでしょうね。

―― ポール・ヤングといえば「80年代UKブルー・アイド・ソウル」を代表するアーティストでした。

西寺 やっぱり、僕自身が一番好きだ! って思う音楽ジャンルをひとつに絞ると「ブルー・アイド・ソウル」なんです。アメリカのダリル・ホールやトッド・ラングレンも最高ですが、とりわけ好きなのが80年代イギリスから流れてきたブルー・アイド・ソウル。世代的にも趣向的にもやっぱり自分の中ではどうしても避けては通れないというか……。

―― 一番自分のなかに溶け込んできたと?

西寺 ですね。アメリカ黒人音楽に憧れたイギリスの若者たちと、アメリカ黒人音楽に憧れた自分のような日本人、もちろんイギリス人アーティストは同じ英語圏だったり、文化的に近い部分はあるでしょうけど、とは言え異国の音楽に心酔して換骨奪胎するという意味では同じ立場。そのアティテュードも含めて、大好きになれたというか。で、「ブルー・アイド・ソウル」の最大のポイントは歌声、シンガーだと思っています。僕が少年時代に惹きつけられた歌声は、ワム!のジョージ・マイケル、カルチャー・クラブのボーイ・ジョージ。ブロウ・モンキーズのドクター・ロバート、スクリッティ・ポリッティのグリーン・ガートサイド。シンプリー・レッドのミック・ハックネル……。忘れちゃいけない、ロバート・パーマー。そして、Q-ティップスからソロになった、今日の主役ポール・ヤングにも一時期夢中になりました

―― 郷太さんが初めてポール・ヤングを意識したのは……。

西寺 「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」ですかね。大ヒットしてましたからねー。あ、久しぶりに安川さんのチャート情報をここでお願いできますか(笑)?




Paul Young 「Everytime You Go Away」 1984

―― 「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」はポール・ヤングの2ndアルバム『シークレット・オブ・アソシェーション』からの3rdシングルで、’85年3月に全英4位、同7月に初の全米1位(年間11位)に輝いたポール最大のヒット曲です。オリジナルはダリル・ホール&ジョン・オーツの名盤『モダン・ヴォイス』(‘80年)収録曲でした。ちなみにホール&オーツは80年代に最もトップ40ヒットを放ったアーティストです。その数はマイケル・ジャクソン(19曲)、マドンナ(19曲)をうわまわる22曲でした。

西寺 前もここで話したかもしれないですけど。ホール&オーツがちょっと休息した'83年半ばに、僕は本格的に洋楽にのめり込んだんです。なので同じ80年代でも彼らはちょっと先輩というかひとつ前の世代のアーティストって感じがしちゃうんですよね。「マンイーター」収録の『H2O』が、'82年10月リリースで。まだその時、僕は、田原俊彦さんやシブがき隊とか『ザ・ベストテン』歌謡曲に夢中な小学三年生でしたから。'83年の初夏あたりに、『モータウン25』のマイケルのムーンウォークとか、「ビリー・ジーン」「今夜はビート・イット」のビデオを観て「洋楽」にどハマりしたんですよね。そこからマイケル・ジャクソン、カルチャー・クラブ、デュラン・デュランらの華やかなMTVポップを次々に聴くようになったんですが、ホール&オーツはひとつカーテンの向こう側というか、TOTOやジャーニーも同じなんですが、70年代から持続してきた彼らが相当な「大人」「オジさん」に見えて、まずいきなりは分かりづらかった。なので、「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」に関してはポール・ヤング版が先で。それがホール&オーツのカヴァーだと知ったとき、ちょっと世代が近い分珍しいところから選ぶなぁと思いましたね。たとえばワム!だとミラクルズやアイズレー・ブラザーズのような、年齢的に大先輩のカヴァーじゃないですか。

―― あまりにドラマティックなポールの「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」に当初ダリル・ホールはあまりいい気持ちじゃなかったらしいですよ。

西寺 今にして思えば、ダリルの気持ちはよくわかりますね。ホール&オーツver.はもうちょっとゴスペルっぽいというか、骨太なオルガンの、悪くいうと地味ですけど、シンプルでもっと「ブルー・アイド・ソウル」として本質的ですもんね。ポール・ヤングver.の方は当時の80’sポップ然としたシンセとかも含め、かなり「歌謡」的な作りというか、一般リスナーに親切で、ソフィスティケイトされ、逆に過剰にパンチを効かせたりしていましたからね。僕はそのあたりも好きなんですけどね。ダリルからしたら、俺は黒人リスナーから「偽物」と嘲られながらせっかくここまできたのに、遠いイギリスから突然来て下品なことをしてくれたもんだなって感じだったのかなぁ。ただ、僕も当時は断然ポール・ヤングの方が洗練されていていいやん!って思っちゃってましたけどね。




Paul Young 「I'm Gonna Tear Your Playhouse Down」 1984

―― 収録アルバムの『シークレット・オブ・アソシェーション』じたいが洗練されたブルー・アイド・ソウルでしたよね。

西寺 良く聴きましたよ。英国産「ブルー・アイド・ソウル」の結晶みたいなアルバムで。「エヴリシング・マスト・チェンジ」にも惹かれましたが、とくに好きだったのが今回のテーマ曲にした「プレイハウス・ダウン」で。'84年にヒットしてたスクリテッティ・ポリッティのシングル群、「ウッド・ビーズ」「ヒプノタイズ」みたいなイメージのアレンジで。この曲もカヴァーでオリジナルは女性ソウル・シンガーのアン・ピープルズ。オリジナルも最高ですね。最近、UKソウルバンドのストーン・ファンデーションが、ヴォーカルに以前この曲をカヴァーしていたグレアム・パーカー、ピアノにポール・ウェラーを招いてカヴァーをリリースして、彼らのバージョンもめちゃくちゃかっこいいです。

第21回 ポール・ヤング 「プレイハウス・ダウン」(1984年)ライヴ写真提供/キョードー東京

Corey Hart & Paul Young
LIVE IN JAPAN 2019
YOUNG at HART
2019年7月2日(木)Bunkamuraオーチャードホール


<Paul Young SET LIST>
サム・ピープル
愛の絆
何も言わないで
愛の放浪者(安らぎを求めて)(マーヴィン・ゲイ cover)
空しい思い(ジョイ・ディヴィジョン cover)
スリップト、トリップト・アンド・フェル・イン・ラヴ(アン・ピーブルズ cover)
プレイハウス・ダウン(アン・ピーブルズ cover)
カム・バック・アンド・ステイ(ジャック・リー cover)
エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ(ダリル・ホール&ジョン・オーツcover)
[with コリー・ハート]

<Corey Hart SET LIST>
イン・ユア・ソウル
ボーイ・イン・ザ・ボックス
ユーラシアン・アイズ
とどかぬ想い
サングラス・アット・ナイト
美しき生命(コールドプレイ cover)
ネヴァー・サレンダー
エヴリシング・イン・マイ・ハート
レット・イット・ビー(ビートルズ cover)
好きにならずにいられない(エルヴィス・プレスリー cover)
YOUNG at HART[with ポール・ヤング]


―― 「プレイハウス・ダウン」は、アン・ピーブルズと同じメンフィス発のR&B系のベーシスト、アール・ランダルが書いていますね。今日のコンサートでは同じくピーブルズ「スリップト、トリップト・アンド・フェル・イン・ラヴ」のカヴァーから「プレイハウス・ダウン」になだれ込むようにアン・ピープルズを連続披露していたのはニヤリとしました。それにしても、ヒット曲のオンパレードでした。

西寺 ただ、やはり喉の調子は悪かったですね。もちろん声のオリジナリティはすごかったですが。ラストの「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」で次に登場するコリー・ハートが早くも飛び入りして、コンディションが悪いポールをかばうようにサビの美味しいところを全部歌ったのにはのけぞりましたね(笑)。ポールが頼んだんですかね(笑)? ブライアン・アダムス好きな安川さんから見たら、やっぱり同じカナダ出身のコリー・ハートなんてストライクなんですよね?

―― ど真ん中です(笑)。今回のジョイント・コンサートの販売用パンフレットのコリー・ハート頁でも想いを寄稿させてもらいました。ポール・ヤング(イギリス)とコリー・ハート(カナダ)は’84~’85年に互いの国で国民的人気を得るほどの人気絶頂期を迎えるんですけど、奇しくもその時期は世界的なチャリティ・ムーヴメントだったんですよね。

西寺 イギリスとアイルランドのオールスター=バンド・エイドによるエチオピア救済チャリティ・シングル「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」の栄えある歌い出しのトップバッターがポール・ヤングでした。これはすごいですよね。 ♪It's Christmastime,there's no need to be afraid(郷太さん生歌唱中)。発売が’84年12月。もともと歌い出しはデヴィッド・ボウイの予定だったようですが、彼が来なくて。で、ポール・ヤングが選ばれて。不思議なんですけど、実績と人気では当時上のはずのスティングやポール・ウェラーもなぜかソロとってないんですよね。ボブ・ゲルドフらプロデューサーにしてみたら、試しに歌ってもらったら圧倒的歌唱力で変えられなかったみたいな感じがしますよね。で、コリー・ハートが参加したカナダのチャリティ・シングルはUSA for Africaのアルバム『ウィ・アー・ザ・ワールド』に収録されたんですよね。個人的には楽曲として客観的に聴いた場合、この一連のチャリティ・ソング3曲のなかでは一番いい曲だったと思います。もちろん、『ウィ・アー・ザ・ワールド』のメッセージのシンプルさも凄いですが。

―― カナダ版のオールスター=ノーザン・ライツによる「ティアーズ・アー・ノット・イナフ」ではトップ・バターではなかったのですが、コリーも重要なソロパートを任せられたんです。ニール・ヤングやジョニ・ミッチェルや作曲者でもあったブライアン・アダムスら居並ぶ先輩を前にどうしても思うようにように歌えず苛立ちながら「僕のどこが悪いの?」ってプロデューサーのデヴィッド・フォスターに食って掛かるんですよ。きっと歌い出しをスマートに務めたと思われるポールとは対照的に、コリーはその繊細さを隠そうとせずスタジオを凍らせたんです(笑)。

西寺 あ、いいですね。そういうの。若くて(笑)。ちょっと気持ちはわかります。でもバンド・エイドも一筋縄ではなかったはずですよ。『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』(NHK出版新書/’15年)でも触れましたが、ヴォーカルの順番というのはアーティストにとってある意味センシティヴな問題だし、プロデュース側もいちばんいち気をつかうところ。大きいプロジェクトの見せ場でもある。バンド・エイドの場合は、ソロはポール・ヤング→ボーイ・ジョージ(カルチャー・クラブ)→ジョージ・マイケル(ワム!)→サイモン・ル・ボン(デュラン・デュラン)、ハーモニーで加わるスティング(ポリス)、トニー・ハドリー(スパンダー・バレエ)から、ボノ(U2)と続きました。あの日のレコーディングで一番面白いのは、ボーイ・ジョージが大遅刻していることですね。だから有名なアルバム裏のあの集合写真にボーイは写ってないんですよ。アメリカで寝坊して起こされて(笑)。コンコルドで慌てて来て夕方にロンドンに入ってきてもソロ歌えるんですから、特別扱いですよね。プロデューサーのミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックス)や、ボブ・ゲルドフ(ブームタウン・ラッツ)にしてみれば「他の連中の気持ち考えてくれよ、何してくれとんねん!」って話ですよ(笑)。





Band Aid 「Do they Know it's Christmas?」1984

―― なんかこのまま面白い話が聞けそうなんですけど。『バンド・エイドの呪い』(笑)。

西寺 「ウィ・アー・ザ・ワールド」もそういうとこあるんですけど、「ドゥ・ゼイ・ノウ~」も元々のメロディより、ひとりひとりの天才シンガー、メロディ・メイカーの独自のフェイクでクオリティが上がっているんです。とくにバンド・エイドは主にミッジ・ユーロが作曲、ボブ・ゲルドフが作詞。ゲルドフが歌ってるバージョンはメロディに抑揚がなくて、いまひとつはっきりしないんですよね。もしかすると歌詞のメッセージが熱すぎて、言葉とメロディが完全に蒸着していなかったのかもしれない。で、このセッションを研究した僕がメロディ・メーカーとしてこの人すごいなと思ったのは、遅刻してきたボーイ・ジョージ(笑)。普通だったらこれだけスターがいるから、セッション開始時にアメリカにいたら「もうええわ!」ってなりますよね。でも、ボブ・ゲルドフは「お前絶対に来い!」って。でも、その価値はあったんです。ほんと、作曲家として過小評価されてますけどボーイ・ジョージはやばいんですよ。♪And in our world of plenty,we can spread a smile of joy,Throw your arms around the world at Christmastime(郷太さん生歌唱中)。元がどんなだったか忘れるほどに、ほとんど「ボーイ・ジョージ・メロディ」ですから。

―― なんかあの歌い方はカルチャー・クラブの名唱「タイム」っぽいですよね。

西寺 そうそう。ボーイ・ジョージって、カルチャー・クラブのメロディと歌詞を書いていたんです。これは僕が彼に直接メール・インタビューした機会に訊けた重要なポイントです。コード進行はメンバーが考えてたんですけどね。だからカルチャー・クラブの楽曲クレジットは「All songs writtend by Culture Club」ってなってるんです。ただし、コード進行そのものは作ってないから、カルチャー・クラブを離れちゃうと、「ボーイ・ジョージからカルチャー・クラブっぽさが消える」という現象が起きるんです。でも、ボーイの恐ろしいほどの才能は、そこにコードと歌詞さえあれば、めっちゃ自在にメロディを奏でられることなんです。プロデューサーとしてみれば、まず「ドゥ・ゼイ・ノウ~」の最初の歌い出しはフェイクとかまわしを必要以上に求めず、ちゃんと「シンガー然」として歌ってくれる旬のポール・ヤングに任せた。そのあとにボーイ・ジョージ節で、一気にあの曲をカラフルに豊かにしてもらおうと。

―― 「ウィ・アー・ザ・ワールド」に置き換えるとライオネル・リッチー→スティーヴィー・ワンダーということですかね。

西寺 ライオネルの場合はあの曲の共作者でもあり、あのプロジェクトのある種ボスですからあの位置は譲れない(笑)。あと、バンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ~」は、アフリカに向かって歌ってるんだけど、イギリス人&アイルランド人が、最大の音楽市場アメリカへ、俺たちUKとアイルランド勢のいまの音楽はこれだ! メッセージはこれだ!って証明するための曲だったのかも、とも思えますね。「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン」の総決算と言いますか。「トゥルー」を大ヒットさせたトニー・ハドリー(スパンダー・バレエ)は歌っているのに、UKの顔・ポール・ウェラーがソロで歌えてないことを考えると、やっぱりオールスターなんだけど、あの時「アメリカで売れてる」人しかソロを歌ってない。その意味では、もしそこにいれば完全な「顔」になったはずのデヴィッド・ボウイが来なくて、歌い出しをアメリカでのブレイク前夜だったポール・ヤングが任されたのは彼にとってはめちゃくちゃラッキーだった。この半年後に「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」で全米制覇ですからね。それもまたシンガーとしてのポールの実力を皆が認めていたから許されたんでしょうね。




Band Aid 「Do they Know it's Christmas?(Live Aid)」1985

―― バンド・エイドのことを考えるとクイーンのフレディ・マーキュリーがあのスタジオにいなかったことが不思議なんですよね。

西寺 時期的に言えば「ドゥ・ゼイ・ノウ~」がレコーディングされるちょうど一ヶ月前、'84年10月に南アフリカ共和国のサン・シティ・スーパーボウルでクイーンはライヴしていて。この頃、特にミュージシャンたちの間で南アフリカのアパルトヘイト、人種隔離政策の中、わざわざ南アフリカに行って大金をもらって演奏しているバンドやアーティストに非難轟々でしたから。

―― 当然のように相当なバッシングに見舞われて。

西寺 劣勢からの復活が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』にも描かれたバンド・エイドのライヴ版、’85年夏のLIVE AIDだったわけです。でもね、当時エピックUK担当だった大先輩の沼田洋一さんに聞くと「イギリスの音楽界は相当な村社会」だと。ロンドンで一部の人たちが一部の場所に集まって、長屋みたいな状態だったと。ネットもないし、携帯もない時代に決められたクラブやディスコのVIPルームに行くと人気者みんなに会えた時代。

―― 皆、顔見知りだ、と。

西寺 はい。ただ、ライバルも含めたその仲間意識は世代で輪切りにされてて、主宰者ボブ・ゲルドフは33歳、その後輩にあたるカルチャー・クラブ、ワム!、デュラン・デュランら二十代の若者たちが中心になって企画されたのがバンド・エイドなんですね。MTVを賑わす若者世代の集まり。そこに、先輩世代であり確実にアメリカでヴォーカリストとしてもヒットを飛ばしまくっていた時期のフィル・コリンズも参加はしてるんですが、この場面で「俺が俺が」とシンガーとして歌ってしゃしゃり出るのもな、とドラムで参加した感じなんだと思うんです。エルトン・ジョンもデヴィッド・ボウイもロッド・スチュワートもクイーンも、当然70年代からのスーパースターですから。




USA for Africa 「We Are The World」1985

―― その体で言うと、アメリカはUSA for Africaで全世代集合の本気できたわけですね。

西寺 やっぱりアフリカを救うのは「黒人アーティスト」だって思いもあったからでしょうね。ライオネル・リッチー、マイケル・ジャクソン、クインシー・ジョーンズが中心になるのはあの当時の必然だったわけで、その輪に白人の代表格ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン……って、いまワザと安川さんの好きなブルースをしゃべらそうと誘ったでしょ!?

―― そんなことないですよ! 今日の主役はポール・ヤングですから。

西寺 なんかまたトラップにかかったかと思ったけど、気のせいかな(笑)。ポール・ヤングは、さっきのチャート情報にもあったように「プレイハウス・ダウン」が全英ヒットしている頃に「ドゥ・ゼイ・ノウ~」に参加しているから最も充実している時期だったんでしょうね。あれから35年が過ぎて、今日もこうやって「プレイハウス・ダウン」を生で聴けたのは嬉しかったですね。残念なことに、喉を痛めちゃったかもしれないけれど、でも、やっぱりその、なんていうんだろ、彼が豪速球投手だったとしたら速い球が出なくなっただけ、という気もします。オリジナリティのあるソウルフルな歌声そのものは失ってなかったと僕は思いました。あと「プレイハウス・ダウン」含めて、マイクスタンドさばきは嬉しかったなぁ。63歳ですよね。個々に彼に求めるものは見る側の数だけあると思うけれど、来てくれて、体感できてよかったなと、心からそう思いましたね。

聞き手/安川達也(otonano編集部)協力/キョードー東京


第21回 ポール・ヤング 「プレイハウス・ダウン」(1984年)

PAUL YOUNG 「I’m Gonna Tear Your Playhouse Down」


Release:1984
Songwriter:Earl Randle
Producer:Laurie Latham
Label:CBS(UK),Columbia(US)

Paul Young – vocals
The Fabulous Wealthy Tarts – Backing Vocals
Pino Palladino – Bass
Mark Pinder – Drums
Steve Bolton – Guitar
Ian Kewley – Keyboards
Laurie Latham –
effects,arrangements


 全英1位に輝くポール・ヤングの2ndアルバム『シークレット・オブ・アソシェーション』からの先行シングルで1984年10月に全英9位を記録。同アルバムからの3rdシングル「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」(’85年7月全米1位)の大成功を受け、アメリカではアルバム収録とは異なるJohn PotokerのリミックスVer.がリリースされ、’85年11月に全米13位を記録した。オリジナルはメンフィスのR&Bシンガー、アン・ピーブルズの’73年のヒット曲だった。






第21回 ポール・ヤング 「プレイハウス・ダウン」(1984年)

ポール・ヤング otonanoスペシャルサイト


プロフィール

西寺郷太
西寺郷太 (公式サイト http://www.nonareeves.com/Prof/GOTA.html)
1973年東京生まれ京都育ち。早稲田大学在学時に結成しバンド、NONA REEVESのシンガーとして、’97年デビュー。音楽プロデユーサー、作詞・作曲家として少年隊、SMAP、V6、KAT-TUN、岡村靖幸、中島美嘉、The Gospellersなど多くの作品に携わる。ソロ・アーティスト、堂島孝平・藤井隆と のユニット「Smalll Boys」としての活動の他、マイケル・ジャクソンを始めとする80年代音楽の伝承者として執筆した書籍の数々はべストセラーに。代表作に小説『噂のメロディ・メイカー』(’14年/扶桑社)、『プリンス論』(’16年/新潮新書)など。

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