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1970年生まれ(昭和45年生まれ)のotonano編集部員が語る80年代洋楽体験記

80年代洋楽メガヒット!PARADISE - MEGA HITS '80s連載企画⑨

極私的80sザ・コラム② エア・サプライ【前編】



 エア・サプライ


【国内盤ペパーミントジャケット物語!?】


限りなく透明に近いエア・サプライ





  12月1日(金)夜。六本木。クリスマス化粧の準備で忙しい東京ミッドタウン。Billboard Live TOKYOでエア・サプライのコンサートを観た。ハイトーン&ドラマティックな歌声で愛され続けるオーストラリアのバンド。グラハム・ラッセルとラッセル・ヒッチコックによる事実上のデュオ。1980年から1982年にかけて7曲連続でBillboard HOT100チャートのトップ5に送り込む大記録を達成した。Billboardの会場名にこれほど相応しく、誇らしいバンドも珍しい。


①「ロスト・イン・ラヴ」1980年5月3日付③位

②「オール・アウト・オブ・ラヴ」1980年9月13日付②位

③「ときめきの愛を」1981年1月31日付⑤位

④「シーサイド・ラヴ」1981年7月25日付①位

⑤「ヒア・アイ・アム」1981年11月21日付⑤位

⑥「スウィート・ドリームス」1982年3月20日付⑤位

⑦「さよならロンリー・ラヴ」1982年9月4日付⑤位



エア・サプライ@Billboard Live TOKYOエア・サプライ@Billboard Live TOKYO


  ステージからはアーリー80sヒットチャートを彩ったメロディが次から次へと飛び出してくる。それにしても聴き慣れたメロディが出てくる、出てくる。いっさいの出し惜しみないセットリストに満員の客席から拍手喝采も止まない。中心メンバーのグラハム・ラッセル(1950年生まれ/ギター&ヴォーカル)、ラッセル・ヒッチコック(1949年生まれ/ヴォーカル)は共に70歳前とは思えない流麗なハーモニーを聴かせる。フルバンドのアプローチのためか、曲ごとの解釈は拡がり、楽曲の味わい深さも増した。円熟の業。それでもやはりエア・サプライには「熟成」という言葉は似合わない。ペパーミントな「清涼」がいちばんしっくりくる。さしずめBillboard Live のオリジナルカクテルに例えるなら「ハミングバード」のようなキウイフルーツな味覚がピタリ。


グラハム・ラッセルグラハム・ラッセル


ラッセル・ヒッチコックラッセル・ヒッチコック


  極私的にはティーンネイジなリスナー時代の甘酸っぱい記憶と相まるのは、彼らの代名詞「ロスト・イン・ラヴ」の存在が大きい。僕を含む当時のチェリーボーイ達を震えあがらせた“性春”映画『プライベート・レッスン』(1981年)。『エマニエル夫人』を演じた妖艶女優シルヴィア・クリステル主演だ! “ゴールデン洋画劇場”のテレビ放映を新聞のラテ欄で発見した日は朝からドキドキしていたっけ。親の目を盗んでブラウン管の前でボリュームを気にしながら観ていたのは劇中の主人公と同じく中学生の時。14歳のフィリー少年がセクシーなお手伝いさんの手ほどきを受けながら大人になるハイライトシーンのBGMとして使われていたのがロスト・イン・ドーテイならぬ「ロスト・イン・ラヴ」。極度の集中力で聴いたあの流麗なメロディは忘れることはできない。胸キュンの記憶だ。2012年10月にシルヴィア・クリステルが他界した時に、アメリカのラジオ局の多くがエア・サプライの「ロスト・イン・ラヴ」を流したというニュースを聞いた時は嬉しかった。大人になったラジオ局マン達からシルヴィアに贈る葬送曲だったことは言うまでもない。


『プライベート・レッスン』1981年・劇場公開作・アメリカ『プライベート・レッスン』
1981年・劇場公開作・アメリカ


  ところで。80年代は、音楽リスナーからの発信はまだまだ皆無に等しく、もっぱらレコード会社やテレビや雑誌のメディアからの情報を正面から受信することが当たり前。だからこそ、エア・サプライの爽やかなイメージはここ日本だけしか通用しないことは知られていなかった。アルバム・ジャケットの欧米ヴァージョンと日本ヴァージョンが違うことはもはや伝説だ。


  透き通った“ペパーミントサウンド”を前面に押し出すため日本盤の初期アルバム・ジャケットは全て青空と海で統一されたのだ。1stアルバム『ロスト・イン・ラヴ』のオリジナルはメンバー5人が高層ビルの前でポーズを決めているのに、日本盤はなんとウィンドサーフィン! 続く2ndの原題は『The One That You Love』なのに『シーサイド・ラヴ』にわざわざ変更。山を背景に浮かんでいた気球は、サンゴ礁の海と真っ白な雲をバックにした鮮やかな気球に差し替えられた。『ナウ・アンド・フォーエヴァー』では、オリジナルはパラシューターが山上で夕陽に溶け込んでいたが、日本盤では海上の青空に吸い込まれていたからサプライ(ズ)!!!


  一連のイメージ戦略はいったい誰の発案なのだろうか? 誰が指示したのか。エア・サプライ側からの苦情はなかったのか。そもそもそのきっかけは……その全部が知りたくて、当時の日本のレコード会社=日本フォノグラムの洋楽制作担当だった北澤孝さんに当時の話を伺ってみた。(インタビューは【後編】に続く)


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オリジナルUS盤ジャケット日本国内盤ジャケット
エア・サプライ
『ロスト・イン・ラヴ』
1980年発表
発売中/\1,000+税/SICP-5454
大好評シリーズ第2弾AOR CITY 2017より



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エア・サプライ
『シーサイド・ラヴ』
1981年発表
発売中/\1,000+税/SICP-5455
大好評シリーズ第2弾AOR CITY 2017より



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日本国内盤ジャケット日本国内盤ジャケット
エア・サプライ
『ナウ・アンド・フォーエヴァー』
1982年発表
発売中/\1,000+税/SICP-5456
大好評シリーズ第2弾AOR CITY 2017より


文・安川達也(1970年10月生まれ・横浜出身/otonano編集部)

Live Photo:Masanori Naruse

協力:Billboard Live TOKYO


●スティーヴ・ルカサー来日公演

12月19日(火)・20日(水)Billboard Live TOKYO

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12月21日(木)・22日(金)Billboard Live OSAKA

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CD5枚組/全90曲収録/歌詞・解説付

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