ジャズメガネのセンチなジャズの旅

19.「イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー/笠井紀美子+峰厚介カルテット」1971年録音
19.「イエロー・カーカス・イン・ザ・ブルー/笠井紀美子+峰厚介カルテット」1971年録音

  1970年前後は日本のジャズが直球のカルチャーだった。ナベサダ、ヒノテルといった愛称で若者たちの絶大な支持を得ていた二人の大スターを筆頭に、プーさん、山下洋輔、そして歌姫の笠井紀美子も大人気だった。これらのアーティストたちは新宿ピットインを始め、いろいろなジャズフェスなどに出演しては多くの聴衆を魅了した。

  映画でも日野皓正が音楽を担当した「白昼の襲撃」や菊池雅章が担当した「ヘアピン・サーカス」が話題を呼んだ。特に笠井紀美子は「ヘアピン・サーカス」にも出演して、そのアンニュイで、スタイリッシュなキャラクターを際立たせた。高校生の僕も虜になった。日比谷の野音で見たときもオリンパス・ペンを持ってたくさん写真を撮ったものだ。

  70年代、ビクターでのマル・ウォルドロンとの録音、TBMでの本作、CBS/SONYでのハービー・ハンコックやシダー・ウォルトンとの録音でずっと追いかけることになる。でも、一番、印象に残っているのは全編日本語で歌った「TOKYOスペシャル」。筒見京平先生の曲が忘れられない。

text & cut by Kozo Watanabe