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1970年生まれ(昭和45年生まれ)のotonano編集部員が語る80年代洋楽体験記

80年代洋楽メガヒット!PARADISE - MEGA HITS '80s連載企画⑦

MEDIA Part3


FM誌は見る、読む、切る!? カセットインデックスはやっぱり鈴木英人!?


カセットインデックスはやっぱり鈴木英人

「貸レコ」「エアチェック」でマイテープを量産!


  「80年代の音楽革命、ウォークマン®の登場により再生環境が著しく変化するなか、各社カセットテープのモデルチェンジも活発化した。そんなカセットテープ需要を促進させた「貸レコ」との密月関係は80年代の特徴とも言えるが、この時代にもっと手っ取り早く自分だけのカセットテープが作れる楽しみ方がもうひとつ身近にあった。70年代から続く人気録音方法「エアチェック」だ。“80年代前半にレンタルレコード店の進出によりエアチェックブームも衰退……”云々な記事をたまに見かけるが、80sエアチェッカーの僕らはLP1枚の「貸レコ」とライヴ特番や特集の「エアチェック」は別モノととらえ、その用途に合わせてカセットテープの種類もキッチリ使い分けていた気がする。 記憶のなかで並ぶ懐かしいカセットテープの背中のラベルを思い出すとそのことを確信する。マイカセットのお気に入りは鈴木英人のイラストだった。

 

『FM fan』1985年4月8日~4月21日~号(共同通信社)『FM fan』
1985年4月8日~4月21日号(共同通信社)

 



主要4誌だけで150万突破のFM誌黄金時代到来!!!!


  1981年に『FM STATION』(ダイヤモンド社)が創刊。70年代からの既発『FM fan』(共同通信社)、『週刊FM』(音楽之友社)、『FMレコパル』(小学館)と合わせて、FM情報誌黄金時代に突入する。AMラジオ放送に対して、音質が良いステレオ放送の番組をカセットテープに録音する、すなわちエアチェック。軒並みFM番組表が2週間分掲載されたFM誌は、エアチェッカーにとっては常に手元で重宝されるまさに必需品。最新音楽ニュースと合わせて大切な情報源のひとつだった。

 

『週刊FM』1984年11月5日~11月18日~号(音楽之友社)『週刊FM』
1984年11月5日~11月18日号(音楽之友社)

 


  話題のアルバムジャケットのそのまま表紙に飾り、最新Billboardヒットチャートや人気連載「長岡鉄男のDynamic Test」を抱え、クラシック系記事も豊富だった『FM fan』(1966年創刊~2001年休刊)。1970年のFM東京(当時)開局の翌年に国内2番目のFM誌としてアーティスト情報やオーディオ記事を充実させた『週刊FM』(1971年創刊~1991年休刊)。漫画記事を導入しながら最もオーディオ情報に力を入れ、アンテナ位置やリスナーの部屋環境の改造まで指南してくれた『FMレコパル』(1974年創刊~1995年休刊)。

 

『FMレコパル』1983年2月13日~2月26日号(小学館)『FMレコパル』
1983年2月13日~2月26日号(小学館)

 


  80年台半ばのFM誌の全盛期には『FM fan』『週刊FM』『FMレコパル』『FM STATION』の4誌だけで合計150万部を突破する一大ムーヴメントを形成。そんななか50万部という最大の部数を誇ったのが後発の『FM STATION』だった。愛称“Fステ”は先行の既刊3誌がA4変形サイズだったことに対し、エンタメ重視の楽しさと情報誌としての見やすさを追求したB4サイズの大判。ノドいっぱいまで見開くことができた中綴じ製本は大好評だった。筆者は、毎号、ノド元の針金を強引に持ち上げて、番組表を本体から切り離し好きな番組や気になる情報を蛍光ペンでマーキングし、2週間使い切ると新聞ラテ欄のようにゴミ箱へ。だから今も数冊手元に残る“Fステ”本体は、何かもの足りないスカスカ感が否めない(笑)。さらにその想い出の本体も虫食いのように切り離された跡がたえない。カセットインデックスの切り抜きだ。

 

『FM STATION』 1981年7月6日~7月19日 創刊号 (ダイヤモンド社)『FM STATION』
1981年7月6日~7月19日 創刊号 (ダイヤモンド社)

 

  “Fステ”の目玉は、1981年の創刊以来、1988年まで表紙も手がける当時の新鋭イラストレーター、鈴木英人が描きろすカセットインデックスだった。アメリカ西海岸や湘南の海、さらに目に見えるはずのない風や音まで独特のタッチで起こす新世代イラスト。本体に毎号6枚ほどのインデックスが付いていて、人気アーティスト名がゴシック印字されたカセットテープの背中用のインデックスまでもが重宝された。このオリジナルインデックスが欲しいがために“Fステ”を買った読者も少なくないはずだ。ちなみに10代の著者の部屋にあった200本を超えるマイテープのインデックスはこの鈴木英人に統一されていた。だからだろう数年前に鈴木英人作品展に展示されていた作品を見ていたら、頭の中を懐かしいメロディたちが駆け巡った。「プライベート・アイズ」ダリル・ホール&ジョン・オーツ、「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」デュラン・デュラン、「ロンリー・ハート」イエス、「ロックバルーンは99」ネーナ、「ホールド・ミー・ナウ」トンプソン・ツインズ、「ワン・モア・ナイト」フィル・コリンズ、「サム・ライク・イット・ホット」ザ・パワー・ステーション、「テイク・オン・ミー」a~ha、「キリエ」Mr.ミスター……止まらない。

 

筆者(安川達也)は10代の頃、FM誌への投稿マニアだった。リチャード・マークスLIVE評(『週刊FM』1989年)とブライアン・アダムスLIVEアルバム評(『FM STATION』1989年)のキリヌキ。筆者(安川達也)は10代の頃、FM誌への投稿マニアだった。リチャード・マークスLIVE評(『週刊FM』1989年)とブライアン・アダムスLIVEアルバム評(『FM STATION』1989年)のキリヌキ。筆者(安川達也)は10代の頃、FM誌への投稿マニアだった。リチャード・マークスLIVE評(『週刊FM』1989年)とブライアン・アダムスLIVEアルバム評(『FM STATION』1989年)のキリヌキ。

 

そして僕はいま鈴木英人イラストが溢れる街に暮らしている。


  さて。究極私的な話。神奈川県の逗子。9年前に生まれ育った横浜から引っ越して来た。湘南の入口と言われるこの街。偶然にも鈴木英人さんが暮らしていて、街のあちらこちらであの特徴的なイラストを見かける。まさか商店街のポスターにまで胸がキュンとなるとは思わなかったが……。先日、 飲み足りないパパ友の勧めで駅前の立ち食いすし処「いなせ」に入った。店の壁にはあの英人イラストがいっぱい。「あ、たまに フラッと来るんですよ、英人」。友達のようだ。気さくなマスターの後ろに置かれた懐かしいデザインの赤ラジカセ。ソニーのベストセラー「CFS-W80」だ。僕の部屋にもあったから間違いない。そのスピーカーからずっと流れていた懐かしい洋楽がダリル・ホール&ジョン・オーツの「マンイーター」に変わった……ニヤリ。店の壁のイラストの一画は、アルバム『H20』のマイテープのインデックスのオリジナル(に似ている)。ダビング音源はアルバムをほぼ丸ごとオンエアしてくれたNHK-FMの『サウンド・オブ・ポップス』(だったはず)。ここもまさに80s PARADISE。マスター、「プライヴェート・アイズ」もおかわりできる!? (おわり)

逗子市内で無料配布されているフリーマガジン『Shonan Beach FM 78.9 Magazine』。表紙は鈴木英人。逗子市内で無料配布されているフリーマガジン
『Shonan Beach FM 78.9 Magazine』。表紙は鈴木英人。

湘南ビーチFM湘南ビーチFM 神奈川県逗子市池子2−5−6

文・安川達也(1970年生まれ/OTONANO編集部)

*掲載誌、切り抜きは全て筆者個人の所有物です。



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