落語 みちの駅

第六十七回 芸協マグマのエネルギーを見た――朝日いつかは名人会
落語 みちの駅
 2月14日(火曜日)PM13:30から第45回朝日いつかは名人会、(前座)笑福亭希光、(二ツ目)神田松之丞・柳亭小痴楽、仲入り後、二ツ目・真打3人によるトークコーナー、そして真打は桂文治。
 この会も10年続きました。夜公演を昼公演に切り替えてから客足も伸びて今回もほぼ満員。都会の興行タイムが完全に白昼化していることが痛感されます。

 これまで、この会のナビゲーター、すなわちリーダー真打は落語協会の人ばかりでした。落語芸術協会、圓楽一門会、立川流の二ツ目も折に触れて出演はしていましたが、どうしても落語協会色が強くなります。そこで今後は落語芸術協会の当代文治さんにも加わって頂き、より芸協の色を出してほしいとお願いしました。近年の芸協の若手が元気なことは衆目が認めることですから。

 松之丞さんは「源平盛衰記」中の「扇の的」、小痴楽さんは「明烏」、文治さんは先代ゆずりの「親子酒」。

 トークはこれまでの“落語協会系”の時代とはガラリ趣きが変わりました。身辺雑事や入門のきっかけ、師匠との間柄……などの無難な話はほとんどなく、落語芸術協会の現状と内情――今はこうだが、本当はこうしたほうが――などに終始しました。

 これは、この日のお山の大将・文治さんのザックバランで日和見をしない人柄の賜物です。公開の場でここまで言うの? と思ったお客様はずいぶんいたことでしょう。

 寄席にちっとも出演しない「神田山陽(かんださんよう)」なら、こんなに活躍している神田松之丞が講談・神田派の大名跡・山陽を継ぐべきだ! なども持論の自論とはいえ、私も素直に拍手を贈りたい思いでした。

 協会の方針で抜擢真打はなさそうだけれど、自分はバッテキあるべきと思う、とも断言していました。

 いつもは真打が二ツ目に誘い水をかけていろいろ言わせるトークコーナーですが、文治流では半分以上“文治独演会”。

 番組は押して予定より20分も遅い終演でしたが、客席は熱い反応を示していました。

 落語芸術協会の近未来に期待を抱かせる午後のひとときであったことは事実です。演者方もお客さまも、お疲れ様でした。また、こんな会をやってみたいと思います。

著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。