演芸界のワンダーボーイ、玉川太福の「古典」「新作」浪曲集の同時発売が決定!「浪曲 玉川太福の世界」演芸界のワンダーボーイ、
玉川太福の[古典][新作]浪曲集の同時発売が決定!浪曲 玉川太福の世界」
浪曲界の新しい風として、ジャンルの垣根をこえて幅広く活動する若手浪曲師 玉川太福。古典演目を継承しつつ、独自の新作浪曲にも意欲的に取り組む玉川太福が、この秋[古典][新作]のCD2タイトルを発売することになりました! 「古典編」はお家芸となる「天保水滸伝~鹿島の棒祭り~」など3席を、「新作編」は「地べたの二人~おかず交換~」など、現代の人間模様を浪花節で描いた演目を収録。声・節・タンカが作り上げる浪曲空間を体感する、太福CDの決定盤です!!

玉川太福、初のラジオパーソナリティー番組がスタート

2019/04/03

JFN系列「ON THE PLANET」の、記念すべき第一回が放送されました!

玉川太福さんがラジオのパーソナリティーをつとめる「ON THE PLANET」(毎週火曜25時〜28時。全国のJFN系列のFM局にて生放送)の第一回目が放送されました。
今回がラジオパーソナリティー初体験ということで、緊張しながらスタジオに入るも、いざ番組が始まるといつもの魅力的な声で、時に唸りも入れながらの楽しいトークを展開した太福さん。

まずは自己紹介がてら、浪曲師になった経緯などを語り、今日初めて太福さんを知ったという人にもその人柄が伝わる放送となりました。
毎週火曜深夜25時からの生放送!次回は4月9日です。お楽しみに!

玉川太福ラジオのパーソナリティーに!

2019/03/14

「ON THE PLANET」(毎週火曜25時〜28時。全国のJFN系列のFM局にて生放送)。

玉川太福が、4月からラジオのパーソナリティーをつとめることになりました! 番組名は、「ON THE PLANET」(毎週火曜25時〜28時。全国のJFN系列のFM局にて生放送)。
初回は4月2日です。ぜひお聴きください!

玉川太福CD発売記念

2018/12/21

12月21日 文化放送「くにまるジャパン 極」にゲスト出演しました!

本日は文化放送さんの番組「くにまるジャパン 極」に、太福さんがゲスト出演しました。
邦丸さんをはじめ番組のみなさまのあたたかい雰囲気で、とても素敵な時間となりました。

番組内で、太福さんが自己紹介する唸りが魅力的でした。
邦丸さん、そして舘谷さん、そしてスタッフのみなさま、ありがとうございました!

「古典」「新作」浪曲集を語る

2018/12/20

最新「壱万字」インタビュー 聴き手:大谷隆之

浪曲ですが、実はこれ、演目の多くは「講談」と重なってるんです。ただ決定的に違うのは、浪曲は一人ではなく、「曲師」という三味線奏者と一緒に演じるということ。私はよく、「三味線伴奏つき一人ミュージカルです」なんてご説明したりするんですけど(笑)。

── 新しいCD『浪曲 玉川太福の世界』、とても面白く聴かせていただきました。三味線と声が一緒になって生まれるグルーヴ感がありつつ、実は落語にも通じる笑いの要素も詰まっていて。

太福 そう感じていただけたのなら嬉しいです! 浪曲って、落語に比べて、お客さまのパイがまだ圧倒的に少ないでしょう。今回、「来福」レーベルさんからお声がけいただいたとき、せっかくだからその入り口になるようなCDにしたかったんです。今の自分の芸を吹き込むだけでなく、たとえば落語や講談がお好きな若い方に「へえ、浪曲ってこんなに親しみやすく、楽しい芸なんだ」と感じていただけるような。

── 「古典編」と「新作編」が同時にリリースされましたが、2枚続けて聴くと、たしかに浪曲という芸のいろんな側面が浮かんできますね。前者は言うなれば、ハードボイルド・サイド・オブ・浪曲。後者はさしずめ、ファニー・サイド・オブ・浪曲という印象でした。

太福 まさに、そういう感じです。ジャケット写真の撮り方に、こちらの意図がばっちり出ているという(笑)。

── たしかに(笑)。表情がまったく違います。

太福 お話をいただいた当初は、1枚に古典と新作を両方入れられればラッキーかなって思っていたんです。そうしたらご担当の方が、「どうせなら1枚ずつレコーディングしませんか」と提案してくださいました。もう、心のなかではガッツポーズです。私としては願ったりかなったりで。

── そもそも、どういう経緯で「来福」レーベルからCDを出すことに?

太福 うーん……どうでしょう。来福、太福で語呂がよかった(笑)。まあそれは冗談として、一つはやっぱり「渋谷らくご」(ユーロライブで定期的に開催されている初心者向けの落語会)が大きかったと思います。この数年、私も出演させていただいてまして。そこで多少なりとも客席を湧かせられるようになってきたのを、たぶんレーベルの方がご覧になっていた。それもあって今回、オファーをいただけたのかな、と。

── 太福さん、シブラクとはゆかりが深いですしね。2015年には「渋谷らくご創作大賞受賞」を獲られて。今年(2018年)は「月刊太福マガジン」と題し、1年間レギュラーで高座も務められました。

太福 本当にありがたいですね。ここ数年、落語ブームと言われている気がするんですが、最近は、神田松之丞さんを筆頭に、講談というジャンルもぐっと盛り上がってきています。その松之丞さんも、実は「来福」レーベルからシブラクの名演を集めたCDをお出しになってますし。落語・講談・浪曲はある部分、兄弟分みたいなところもありますので。ぜひ、あわせて聴いていただきたい。

── そこで改めて、なんですが……これから浪曲の世界を初体験する人のために、落語や講談との違いをごく簡単に教えていただけますか?

太福 はい。まず落語。これは本来「落し噺」というくらいで。人情噺、怪談、芝居噺と種類はいろいろありますが、基本は笑いをメインにした一人語りの芸です。出てくるのも熊さん(熊五郎)、八っつぁん(八五郎)に代表される、江戸の庶民が多い。

── はい。

太福 対して講談は、たとえば「忠臣蔵」「清水次郎長伝」などが典型ですけど、実際あった歴史上の話を面白おかしくエンタメ化した側面が強い。多くの演目は、娯楽作品であると同時に、ためになる人生訓や処世訓になっていて。講談師は張扇(はりおうぎ)という扇子をパンパン鳴らし、調子を取りながら一人で語ります。

── 威勢がよく、ちょっとものものしい印象もあります。

太福 一般的にはそうかもしれませんね。そして浪曲ですが、実はこれ、演目の多くは講談と重なってるんです。ただ決定的に違うのは、浪曲は一人ではなく、「曲師」という三味線奏者と一緒に演じるということ。私はよく、「三味線伴奏つき一人ミュージカルです」なんてご説明したりするんですけど(笑)。要は講談に三味線が入り、「節」と呼ばれる歌の要素が加わったものが浪曲だと考えるとわかりやすい。それくらい、この二つの芸は共通点が多いんですよ。

── ただし、浪曲のほうがより音楽に近接しているわけですね。

太福 その通りです。浪曲はあくまで、曲師と二人して作りあげる世界。ここが落語、講談など一人語りの芸とは大きく異なる。さらにもう一つ言うと、浪曲は比較的新しい芸なんですね。ネタの大部分は講談に由来しますが、大衆芸として確立したのは明治以降で。だからこそ落語、講談、義太夫、新内などすでにあった語り芸のいろんな要素の、いわば“いいとこどり”をしている。明治初年から昭和三十年くらいまでに、浪曲が隆盛をきわめたブームは四回あったと言われてます。

── 昭和戦前から戦後の一時期まで、浪曲師こそが演芸界の花形だったと聞いたことがあります。あの国民的歌手の三波春夫さん、村田英雄さんももともとは浪曲師だったと。

太福 私が生まれる前ですが、ラジオをつければ一日じゅう浪曲だった、という時代もあったようですしね。ただ、音楽好きな方はピンとくるかもしれませんが、音というのは流行りすたりも激しい。しかも、一つ前の流行ほど古臭く思えてしまうのが世の常──いわば宿命ですから。浪曲は、落語や講談に比べてブレイクの度合いが激しかったがゆえに、昔の芸と見なされがちだった。そういう側面は、おそらくあったと思いますね。

── そんな浪曲の世界に、1979年生まれの太福さんが、なんでまた飛び込もうと思ったんですか?

太福 ですよね(笑)。昔、私が「お笑い芸人になる」と言ったときにはなにも言わなかった母親が「俺、浪曲師になろうと思う」って宣言したときはさすがに絶句してましたから。「浪曲ってあんたのお婆ちゃんが好きだったやつよ……」って。

── お母さまにとっても、完全に想定外だった(笑)。

太福 申し訳ない(笑)。浪曲界に入った理由は、出会いのひと言につきますね。順を追ってお話ししますと、もともと子ども時代から笑いが好きだったんです。私は新潟の生まれで、日常的な娯楽といえばテレビぐらいしかなかった。世代的には、ダウンタウンさん全盛期。「ごっつええ感じ」「ガキの使いやあらへんで!」が大好きで、将来は漠然とコント作家に憧れていました。

── おお、そうだったんですね。

太福 実際、大学を卒業して一度は放送作家の事務所に入ったんです。ところが当時の私は「放送作家=コントを書く人じゃない」という基本的なことがわかっていなかった。放送作家はいろんなことを調べる仕事なので、そのリサーチができてない時点で、そもそも向いてないんですけれど(笑)。それで事務所は辞めて。高校の同級生とコンビを組んでコントをはじめました。一銭にもならないお笑いライブに出たりして……まだ若くて、根拠のない自信に満ち満ちていたんですね。

── どういうテイストのコントだったんですか?

太福 わりと演劇っぽいものが多かったですね。その頃、友だちに誘われたのがきっかけで、小劇場にハマっていまして。「THE SHAMPOO HAT」とか「五反田団」とか、いわゆる現代口語演劇の流れを汲むところ。そういう劇団の舞台を見ると、本当にどうでもいい日常のやりとりを演じてるだけなのに、ものすごく面白かったりする。

── まさに「地べたの二人」の世界観にも通じるような?

太福 そうそう、まさに。それに影響されて、自分も15分とか20分とかほとんど事件が起こらない長めのコント台本を書いて、演っていました。そうこうするうち、自然と演劇系のつながりが増えていきまして。自分にとってはこれが大きかったんですが、WAHAHA本舗の創設メンバーでもある村松利史さんと出会ったんです。もちろん大先輩ですけど、なぜだか私のコントを評価してくださって。同じ新潟出身で、当時たまたま近所に住んでいたご縁もあり、普段からよく会っていろいろお喋りをするようになりました。それであるとき、「落語、面白いよ。見にいかない?」って誘っていただいたんです。で、柳家小三治師匠に夢中になった。

── へえええ、まず落語と出会われたんですね。

太福 はい。小三治師匠の高座をずいぶんと追いかけました。その流れで村松さんから、今度は「浪曲って聴いたことある?」と薦められまして。なにもわからずに玉川福太郎の口演を聴きにいったら、これがまた、ものすごい衝撃だったんです。

── 二代目・玉川福太郎師匠。後に太福さんが入門される方ですね。どういうところに魅了されたんでしょう?

太福 とにもかくにも楽しかったんですよ! 浅草公会堂という大きな会場の、いちばん後ろの安い席で、ネタは今回「古典編」にも収録した「天保水滸伝 鹿島の棒祭り」でした。興味も知識もまるでない侠客伝を、大したマクラもなくいきなり30分くらい唸られて。気が付けば力づくで、その世界に引きずり込まれていた。私が生涯聴いた浪曲でも、あれは本当に特別な体験でしたね。それまで自分がこだわってた作り手のセンスとか、人と違った発想とか、そんなのまったく意に介さずに聴衆を惹き付けてしまう声の力。芸の力。浪曲の力って「すごいなあ」と。

── コントとも演劇とも、落語とも違う魅力があった。

太福 今にして思えば、あれはおそらく声の迫力プラス、音楽の歓びだったんでしょうね。聴きはじめの頃は耳が慣れてないから、「節」になるとなにを言ってるのかよくわからない(笑)。「啖呵」という会話部分は聴き取れても、節が入るといきなりストーリーを見失っちゃったりしたんですけど……でも、あのウワーッという迫力だったり、「ううう」という唸り声だったりね(笑)。語尾を「〽︎ 鰯のォォォ子ォォでェェはァァァァ」なんて語尾を思いきり伸ばしたかと思うと、リズミカルにトントン、トンと語ったりもして。表現のすべてがダイナミックだった。音楽もそうですけど、声って突き詰めれば、空気の振動じゃないですか。

── たしかにそうですね。

太福 まさに節と啖呵と三味線が重なり合って生まれるグルーヴというか。それを身体全体で感じとる気持ちよさがあったんだと思います。

── たしかに浪曲のフレーズって、自分でも唸ってみたくなりますよね。よく昔の映画で、手拭いを頭にのせたオジサンが「〽︎ 旅ィゆけばァ〜」と口ずさむシーンが出てきますが、あの感じで。

太福 はい、まさに(笑)。その気持ちよさも、間違いなくありますよね。当時の浪曲は、今で言うヒットソングみたいなものでしたから。それこそ小さな子どもが遊びながら「〽︎ 佐渡へ佐渡へと草木もなびく」と「佐渡情話」の一節を唸るなんてことも、めずらしくなかったと先輩から聞いてます。

── たとえば今回の「古典編」に入っている「若き日の大浦兼武」にも、迷う主人公の気持ちを歌った「〽︎ 心は二つゥゥ、身は一つゥゥゥ」なんて名調子があって。あれなんか、普段から思わず使いたくなります。

太福 嬉しいですね(笑)。そうやって短いフレーズでもお客さまの耳に残ったり心をぎゅっと掴めるのも、また浪曲の武器だと思うんです。当時、私は27歳。根拠のない自信もなくなり、このまま売れないコントを続けるか、それとも裏方のほうに回るのか、すごく迷っていた時期だったんですね。ちょうどそのタイミングで浪曲に出会えた。

── それで右も左もわからない浪曲界に、いきなり飛び込んだ?

太福 そうなんです。しかもその頃の浪曲界は、私みたいな若僧は一人も舞台に上がっていない状態でしたので。何度か通って、いろんな師匠方の高座を見るうちに、これはもう出会っちゃったと言いますか、見つけちゃったと言いますか。自分で勝手に運命みたいなものを感じまして。それで半年後には、福太郎のもとに弟子入りをしました。

── 玉川福太郎師匠の芸風そのものに、いわば惚れたと。

太福 私の場合、それがいちばん大きかったです。加えてもう一つ、自分なりの思惑というか、考えみたいなものもありまして。

── なんでしょう?

太福 もちろん師匠の福太郎だけでなく、いい浪曲というのは本当に素晴らしい芸だとは思ったんですけれど。反面、番組全体で見ると、堅いネタばかりが続くことも珍しくなくて。そこで、自分が作ってきたコントみたいに、なんでもない日常のオカシミを描くネタを浪曲と組み合わせたら、いま誰もやってないことは出来るんじゃないかと。その一点に可能性を感じまして。

── 子どもの頃から好きだったモダンな笑いのセンスと、新たに出会った浪曲という伝統芸の世界が、そこで交差するわけですね。

太福 そうです、そうです。

── そう考えると、『浪曲 玉川太福の世界』というCDを出すにあたって「古典編」「新作編」を同時にリリースするのも、ある種の必然のように思えてきます。

太福 まだ芸歴十二年目の未熟者で、とても「必然」なんて言える立場ではないんですけれど……私にとって古典と新作は、言うなれば車の両輪。生意気を言うようですが、どちらの一方が欠けても自分の表現にはならない。というか、その両方を違和感なく描けるのが浪曲という話芸の面白さであり、懐の深さだと思うんです。あ、だからCDを2枚とも買ってくださいって無理強いするわけじゃないですよ(笑)。

── はははは、本当ですか?

太福 いやあ、本音を言えば、2枚同時に聴いていただけると嬉しい。お小遣いが乏しい方は、お友だちと分担買いしていただいて、お互いに貸し借りしていただくとか(笑)。

── とてもナイスなアイデアです(笑)。ちなみに今回、CDを制作するにあたって、太福さんからなにか要望は出されましたか?

太福 収録する演目などはすべて、担当ディレクターの方と相談して決めさせていただいたんですが、私の方からは一点だけ。ライブではなくスタジオで録音できないでしょうか、ということは申し上げました。

── どうしてでしょう?

太福 演芸もののCDって、落語も講談も、だいたいライブ盤が主流なんですね。やっぱり、お客さまの反応あっての話芸ですから。

── へええ、そうなんですね。

太福 でも浪曲に限っては、それこそ往年のSP盤からアナログレコード、CDの時代まで膨大な音源が残されていますが、その大部分がスタジオ録音なんですね。おそらく三味線という音楽的な要素が強いために、観客のリアクションなしでも作品として成立しやすいんです。加えて私自身、ふだんはマイクを使わずに、地声で口演することが多いんですね。ライブで目の前のお客さまに喜んでいただこうとすると、どうしても盛り上がり重視というか……滑らかな節回しより、「前に出た落語家より笑わせてやる!」みたいな。そんな浪曲師だめなんですけど(笑)。

── なるほど。それで今回は、スタジオでじっくり録ろうと。

太福 そうなんです。もちろんオーディエンスの熱気と一体化したグルーヴとか空気感みたいなものも、浪曲の大きな醍醐味なんですが。まだ芸が未熟な自分の場合、今回はスタジオ・レコーディングのほうが音の細部まできっちり伝えられて、繰り返し聴いていただいた時により満足してもらえるのかなと。そこは担当の方ともすぐ一致しました。

── それではまずCD「古典編」。今回収録された 「若き日の大浦兼武」「青龍刀権次(二) 召し捕り」「天保水滸伝 鹿島の棒祭り」の三席は、どういう理由で選ばれたんですか?

太福 自分が持っている古典ネタのなかで、彩りの豊かさと言いますか。浪曲という芸能のバラエティ豊かさを感じていただける演目を選びました。浪曲って基本「情けは人のためならず」、自分を犠牲にして誰かに親切にすると、回りまわって自分に返ってくる、みたいな筋立てが多いんですね。

── たしかに「それってナニワブシだね」的な表現は、今でも日常会話のなかでけっこう使われています。

太福 ええ、まさに。一席目の「若き日の大浦兼武」はもとは講談からきたネタだと思うんですが、その典型と言っていい人情話で。ケラケラ笑える箇所と、思わずホロリとさせる箇所がどちらも入ったスタンダードな一席ということで、収録させていただきました。

── 続く二席目「青龍刀権次(二) 召し捕り」はいかがですか?

太福 これも同じく講談のネタです。ただ、数ある講談のネタの中でも珍しく、主人公がただの小悪党という(笑)。落語では、立川談志師匠も高座にかけておられます。「来福」は落語や講談のCDを出しているレーベルですし。演芸に興味をもたれた方が今後、三つのジャンルを聞き比べたくなった際には最適かなと思って選んでみました。あと権次は、うちの師匠が十八番にしていたネタでもあります。

── 亡き二代目・玉川福太郎師匠の十八番で言うと、三席目の「天保水滸伝 鹿島の棒祭り」も有名だとうかがいました。

太福 はい。この「天保水滸伝」は俗に「侠客伝」と呼ばれる連続物で、玉川一門のお家芸なんです。仁義の世界に生きる強くて勇ましい男たちを迫力たっぷりに描いた、いわば武勇伝。落語にはない、これまた浪曲らしいモチーフだと言えます。

── そのなかでも、「鹿島の棒祭り」の一席を選んだのは?

太福 長い続きものの場合、前後のエピソードを知らず一部だけ聴かされても、繋がりがわからなかったりするでしょう。でも「鹿島の棒祭り」は、とにかく主人公のキャラが立っている。平手造酒という剣豪のとんでもない酒乱ぶりだけで十分に楽しんでいただけるので。

── いますよね、自分たちの周りにも。ああいう困った人(笑)。

太福 いますいます(笑)。誰でも共感できるキャラクターだと思うんです。お酒さえ飲まなければ万事うまくいくのに、つい誘惑に負けちゃうところとか……私のなかにも確実にある(笑)。だから演者にとっても、お客さまにとっても親近感が湧くんじゃないかしら。

── 実は入門から三か月足らずで、福太郎師匠は不慮の事故でお亡くなりになりました。太福さんから見て、どういう芸風の方でした?

太福 目の前のお客さまに、とにかく楽しんでいただきたい。つねにそれを考えている人だったと思います。声量も技術もすごかったけれど、決してそれをひけらかしたりせず、むしろ「浪曲って堅苦しいものばかりじゃない。楽しいものなんですよ」という一点を伝えようとしていた。寄席に来られるお客さまが今よりずっと少なかった時代を知ってる世代なので。聴き手のパイそのものを広げなきゃという責任感がすごく強かったと思うんです。

── だからこそ、エンターテイナーとしての自覚が強かった。

太福 だと思います。演目の選び方もそう。大石内蔵助や清水次郎長親分みたいな立派な人だけじゃなく、もっと等身大で情けない……落語でいうと与太郎みたいな主人公が出てくるネタも積極的に取り上げて。寄席の番組全体、もっといえば、浪曲界全体のバランスを考えていたんじゃないかと思います。

── そう考えると、今回の権次や平手造酒もまさにそうです。

太福 はい。そこは間違いなく、弟子として師匠から受け継いだ部分だと思っています。実際の師弟だった期間は短かったけれど、私なりにあれこれ芸を工夫するなかで、最近「ああ、これも師匠の通られた道だったのかも」と感じることが多々あるんですよ。登場人物の描き方なんかもそうで……。

── たとえばどういった部分ですか?

太福 浪曲のなかの台詞って、要所要所でちょっと歌舞伎っぽくなるというか、いわゆる「芝居がかった」言い回しが多いんですね。でも師匠の場合は、むしろ落語の演出に近いというか……。抑揚は抑揚で大事にしながらも、登場人物への感情移入を疎かにしない。だからときどき、啖呵に山形訛りが混ざってたりするんだけど(笑)。極端に声色を使い分けたりしないし、会話の間もけっこう早い。そういうナチュラルな描き方って、実はリアルだし、自分にも合ってるんじゃないかなと。

── 人物造形がナチュラルだからこそ、「ここぞ!」という節や唸りとのメリハリが光る、という効果もあったりしますか?

太福 ギャップの面白さですよね。大いにあると思います。ただ、年季の入った浪曲ファンのなかには、もっと歌い調子に近い台詞を好まれる方もおられますし。結局は、演者にとってどちらのやり方がより合っているかという問題ですね。私自身の好みでいうと、台詞の部分は調子よりも、うちの師匠と同じように人物の気持ちを大事に演じたいな、と。ちなみに浪曲史上最大のスターである二代目広沢虎造先生(1899〜1964年)も、残された音源を聴くと、実はかなり間が早いんですよ。

── へええ、そうなんですか。

太福 はい。トントンとテンポがいいし、女性や子どもを演じるときも、声色をほとんど変えていない。急所によってウワーッとクサく唸ったり語ったりもするんだけど、基本サラッとナチュラルに、現代的な「間」で演じている印象ですね。そういうところは、うちの師匠と通じるものがあるなと。これは最近、つとに感じることかな。

── そう考えると今回の「古典編」は、文字どおり入魂の三席が選ばれたわけですね。もう一枚の「新作編」収録の演目についてはどうでしょう?

太福 「地べたの二人」シリーズから選ぶことは、最初から決めていました。今の私にとっては十八番の武器ですから。そのうえで、合計十一席あるエピソードの中から、寄席などでよく演じる鉄板のネタと、逆に客前ではほとんど演ってない、とびきりなにも起きないレアなネタを両方入れています。

── どうでもいいことを話ながら、二人して絡まった配線をほどくだけという、「配線ほどき」の一席ですね(笑)。絶妙にウザッたい年配者のサイトウさんと、なんとかして付かず離れずの距離をとろうと苦心する若者のカナイくん。このコンビの新作浪曲は、どうやって生まれたんですか?

太福 実はこれ、もともとは浪曲師を志す前に、コントとして台本を書いたものだったんです。どうでもいい日常のやりとりをボソボソと喋る面白さを、なんとか浪曲で再現できないかと思って。主人公を電気工にしたのは、自分のオヤジが電気工事の仕事をしていたから。サイトウさんのモデルはたぶん……相談相手になっていただいてた村松利史さんですね(笑)。

── あ、言われてみればたしかに(笑)。面影あります。

太福 ご本人はもちろん、あんなウザい人じゃ全然ないんですよ(笑)。自分の好きな笑いって、結局のところ微妙なズレなんですよね。どちらも面白いことを言おうとはしていないのに、噛み合わないまま話が進んでいって。どちらも一生懸命だから微妙な違和感だったり、ギャップが生まれるという。

── その感覚は、往年のダウンタウンのコントにも通じるのでは?

太福 あー、言われてみればそうかもしれしれません。昔の自分は、テレビで観たそれを舞台でまんま再現しようとしていたんだと思う。でも浪曲というフォーマットと出会うことで、そこにメリハリが加わったというか……。ボソボソと喋る日常のオカシミと、要所を節でグワッと持っていくグルーヴが化学反応を起こして、私自身の想像を超えた表現になったのかなぁと。

── たとえば「おかず交換」の一席。唐揚げにタルタルソースのかかったカナイくんのお弁当を見て、サイトウさんが驚愕する場面があるじゃないですか。その一瞬を三味線プラス強烈な節回しで歌うことで、聴き手の目の前に、見たことのない光景が広がっていく(笑)。文字どおり太福さんが開いた新境地であり、独擅場ですね。

太福 ありがとうございます(笑)。もっとも、最初から勝算があったわけじゃなくて。それこそ「渋谷らくご」など、お客さまの前で実験できたのが大きかったと思います。「あ、刺繍の色がオレンジっていうフレーズ、こんなに受けるんだ。じゃあ、もう一押ししてみよう」とか、手探りでネタを作っていけましたので。サイトウさんとカナイくんのコンビも、演じながらどんどん育っていますし。おそらく今後、回数を重ねるたびに、まだまだ変わっていくんじゃないかな。

── へええ。そういう変化もまた、楽しみですね。

太福 はい、とても。私自身、作った時点では完全にカナイくん目線で台本を書いていましたが、これから年をとってサイトウさんの年齢に近くなれば、「最近の若者ってよくわかんねえな……」という実感が勝ってくるかもしれませんし。CDのバージョンはあくまで、2018年時点の記録ということなんでしょうね。あ、ちなみに最近、虎造先生の十八番だった「清水次郎長伝」を高座にかけるようになって気付いたんですが、あのネタも「地べたの二人」に通じるオカシミがあるんですよ。

── それはかなり意外です。どういうところでしょう?

太福 「石松と三十石船道中」という有名な一席があるでしょう。「〽 江戸っ子だってね、寿司食いねえ」という台詞が出てくるやつ。あのシーンなんてただ船のなかで飲み食いしながらダベッてるだけ。自分の名前がなかなか出てこずに、森の石松がジリジリするだけでドラマティックな要素はなにもない。それが一時期は、日本人なら誰もが知っているフレーズとして流通していたわけで……。なにも波瀾万丈のストーリーじゃなくても、聴き手の心は動かせるんじゃないかと。それこそ弁当のおかず交換みたいな些細な話でも(笑)。いつの世も変わらぬ心の機微さえ、しっかりと描けていれば。

── 今回の「新作編」は、まさにそういう仕上がりになっていますね。

太福 生前、師匠からこんなことを言われたことがあるんです。「今の若手は、俺より古臭い浪花節を演ってるんだよ」「10代20代の若者に媚びろとはいわないが、せめて自分と同世代のお客さまに喜んでいただける芸をしないとな」と。要は伝統という砦のなかに立てこもったりせず、ちゃんと時代の空気を吸って、目の前のお客さまに喜んでいただける浪曲を演りなさいということだと思うんですが。最近、その言葉をしょっちゅう思い出すんですよ。

── なるほど。含蓄の深い言葉ですね。

太福 たしかに、偉大な先人たちの芸を学び、吸収することはすばらしい。でもそれはあくまで、当時の演者が、当時のお客さまに向けて作りあげたものなんですよね。それをそっくりコピーしても、今を生きる大衆演芸としては、おそらく輝かない。もし今、虎造先生が生きておられたら、きっと過去の音源とは違う演じ方をされると思うんです。

── だからこそ古典のなかに現代的なアプローチを盛り込んだり。反対に新作のモダンな笑いと、節・啖呵・唸りなど浪曲本来の技を掛け合わせてみたり、いろんな試行錯誤が大切になると。

太福 その通りです! 伝統にフォーカスし、それを突き詰めているだけでは、おそらく浪曲というフレキシブルな芸の魅力は出てこない。むしろそれをリスペクトしつつ、今現在の大衆演芸として生きることに全力を注いだとき、浪曲の持つ本当の可能性が見えてくる気がする。まだまだ未熟者ではありますが、今回「古典編」と「新作編」のCD2枚を楽しんでくださったお客さまにほんの少し、その思いが伝われば嬉しいなと思っています。

インタビュー・文/大谷隆之

玉川太福CD発売記念
お店回りレポートその2

2018/12/20

12月18日 大阪のレコード店さんにおじゃましました!

この日は大阪のレコード店さんにおじゃましました。
まずはタワーレコード梅田NU茶屋町店さん。TOWER RECORDS CAFEが隣にある、おしゃれな雰囲気の店内でした!

続いてタワーレコード梅田大阪マルビル店さんに。
広い店内には様々な商品がたくさんありました。

あたたかくお迎えくださいましたタワーレコード梅田NU茶屋町店さん、タワーレコード梅田大阪マルビル店さん、本当にありがとうございました!
お近くにお越しの際は、太福さんのコメントをぜひご覧ください!

玉川太福CD発売記念
お店回りレポートその1

2018/12/14

12月13日 レコード店さんにおじゃましました!

この日は東京のレコード店さんにおじゃましました。
まずはタワーレコード渋谷店さん。6Fフロアの方に案内され、商品が展開されているところに案内されました。棚には太福さんのコメントを置かせていただきました。タワーレコード渋谷店さん、ありがとうございました!!

続いて山野楽器銀座本店さんに来店。なんと2か所で商品展開!

1Fフロアにて大きく取り上げくださってました。こちらも太福さんのコメントを飾っていただきました。

山野楽器銀座本店さん、ありがとうございました!
お近くにお越しの際は、太福さんのコメントをぜひご覧ください!

「玉川太福CD発売記念イベント
~唸りとタンカと囲み取材と~」

2018/12/14

●EVENTレポート

この秋、『浪曲 玉川太福の世界』と題したCDの「古典編」「新作編」を、ソニー・ミュージックダイレクトの落語レーベル「来福」から2枚同時発売した“演芸界のワンダーボーイ”こと、玉川太福。

そして、さる12月7日。「玉川太福CD発売記念イベント 〜唸りとタンカと囲み取材と〜」と銘打った特別な催しが、都内で行われた。

参加したのはメールによる抽選で招かれたファンの方々と、マスコミ各社の取材陣。太福さんの口演に加えて、プロ記者たちによる「囲み取材」を公開スタイルで実施。ライブ感あふれる会話をお客さまに楽しんでもらいつつ、その場で直接質問もしていただこうという、実にユニークな趣向である。

浪曲界のなかでも、笑いのセンスと当意即妙なアドリブには定評のある太福さん。はてさて、どんなスリリングな会話が展開されるのか!? カフェ形式の会場いっぱいの参加者たちは、イベント開始前から楽しげにざわめいて、太福さんの登場を期待に満ちた表情で待っていた。

ざっと見渡したところ、男女比率はほぼ半々。年齢層もかなり広い。年季の入った演芸マニア(風)の男性もいれば、プチ追っかけ(風)の若い女性、さらには親子連れの姿も目に付く。落語に牽引されるかたちで盛り上がってきた近年の伝統話芸ブーム。裾野は着実に広がっているようだ。

そうこうするうちに、定刻の19時半。司会者が口上を述べた後、まずは曲師(三味線)の玉川みね子師匠が登場。大きな拍手で迎えられる。太福さんにとっては、亡き師匠・玉川福太郎の「おかみさん」。息の合った演奏で唸りやタンカを盛り上げる、口演には欠かせない存在だ。

さらに拍子木の「チョン、チョンチョン」という音が響き、粋な出囃子が奏でられ……いよいよ太福さんの登場。芥子色の着物に若竹色の袴のりゅうとした姿に、客席から間髪入れずに「待ってました!」の声がかかった。大拍手のなか、しばしの“タメ”を作っての第一声は……

♪本日はぁぁ〜CD発売のぉぉぉ〜(テテン)
  公開ィ 囲みィ 取材ィィィィ(チャチャチャン)
  よぉこそ お運びくだぁさい ました
  どうも ありがとう ございまぁすぅぅ

滑舌よろしく明朗闊達な、いきなりの“太福節”。この日の会場にはマイクもスピーカーもなし。豊かな地声が、広めの会場に朗々と響きわたる。

♪ご入場時に 皆さんにお渡ししております 資料のなか〜にぃ〜(テテン)
  入っております ステェッカーァァァァ(テテテテン)
  ソニー・ミュージックのキャラクターその名も
  「大福くん」でございますぅぅ〜

と唸り、かねて用意の「大福くん」ぬいぐるみをポンと演台に置けば、客席からはドッと笑い声が。口演によればこのオリジナルゆるキャラ、40年前の「およげ! たいやきくん」、20年前の「だんご3兄弟」に続いて「20年に一度、和菓子キャラが流行ると信じて」作られたものだそうで……

♪来年あたりに この「大福くん」と太福のぉぉ
  コラボがあるかもしれません

というツカミで、会場はすっかり大福さんのペースに。挨拶からイベントの趣旨説明、時事ネタまで一切合切を三味線に乗せて、その場で語って、聞かせてしまう。この臨機応変な対応力とエンターテインメント性こそが太福さんの身上であり、また浪曲という演芸の強みなのだろう。その後は、ファンにはお馴染みの自己紹介。

♪流れも清きィィ 玉川のォォォ
  水に浮かびし 光る玉ァァ
  ダイヤモンドか サファイアか〜
  それとも大きな真珠玉ァァァァ〜

という玉川太福のテーマを、ひとわたり。腹の底にグッと力を込めた調子で唸れば、会場のボルテージもグッと上がる。すでに大福さんの口演に通っている人も多いのか、合いの手や拍手のタイミングもばっちりだ。

こうして浪曲による短い「ご挨拶」が終了。いったん楽屋に戻った太福さんが、会場セッティングの後に再登場し、今度はマスコミ各社の記者たちがぐるり演台を取り囲んでの「公開質疑応答」タイムのスタートだ。

「改めまして、玉川太福でございます」と深々と頭を下げた太福さん。ついさっきまでの豪快な唸りとは裏腹に、物腰どこまでも柔らかく、声も口調も温かさに満ちている。「不慣れなところもあるかと思いますが、今日は気楽に楽しんでいただければ」と来場者を気づかいつつ、「人生初の囲み取材が謝罪会見じゃなくて本当によかった」と、笑いを取ることも忘れない。

さて、記者からの最初の質問は、「浪曲そのものの魅力をどう捉えるか」というストレートもの。この問いに対して太福さんは、「大衆三大話芸といわれる落語、講談と比べたとき」と簡単に前置きしたうえで、「このなかで唯一、三味線が入り、歌うような節回しが楽しめるのが浪曲というジャンル。その迫力や心地よさが最大の特徴であり、武器だと思います」と端的に答える。さらに自分自身の活動に引き寄せて……

「わたくし自身、昔ながらの浪花節のような(太い)声が出せればと思っておりまして、よほど大きな会場でないかぎりは、マイクなしの地声で語っております。そういった浪曲師の声や節回しと、三味線のメロディーがせめぎ合い、譜面のないジャズのような臨場感やグルーヴが生まれてくる。それがほかの芸にはない浪曲の魅力であり、自分もまだまだ未熟ではありますが、そういう浪曲の“命”と言える部分を、もっと高めていきたい」

大音声の唸りによる押し出しと音楽的グルーヴがあるからこそ、太福さんの得意技である「日常のなにげないオカシミ」との落差もキラリと光る。この幅広い面白さも含めたトータル力を磨き、「落語とも講談とも違う、そして浪曲界でも唯一無二と言われるような芸を目指したい」と抱負を語った。

次の質問は「新作CD2枚の演目を選んだ理由」。これについてはレーベルの担当者と相談のうえ決めたそうだ。そのうえで「新作編」は、自身の十八番ネタである「地べたの二人」シリーズから四席。寄席などでよくかけている鉄板エピソードに加えて、客前ではほとんど演らない「配線ほどき」というレアな話を両方入れることにしたという。

「サイトウさんとカナイくんという作業員のキャラクターが、絡まった配線をただほどくという、なにも起きない話なんですけれど(笑)。耳だけで聞いていただいた際、クスッとオカシミが込み上げてくればいいなと。実際、今回の四席でこれがいちばん笑いました、というお声もいただいています」

対する「古典編」は、初心者が聴いても、浪曲という芸のエッセンスがよく伝わる演目を中心にセレクトされている。

「冒頭の『若き日の大浦兼武』は、亡くなった国本武春師匠から教えていただいたネタで、ザ・浪花節というべき人情話。“情けは人のためならず。回り回って己のため”という典型的な展開で、ケラケラ笑えるところと、ホロリと泣かせるところが両方入ったスタンダードな一席です。

次の『青龍刀権次 (二)召し捕り』は、私の師匠である(玉川)福太郎も十八番にしていたネタ。もともと講談でしたが、落語にも翻案されて立川談志師匠も口演されています。来福レーベルは落語、講談のCDも出されていますので、いつか聞き比べてみたいという方にぴったりの一席として選びました。

最後の『天保水滸伝 鹿島の棒祭り』は、浪曲というジャンルのなかでも特に大きなモチーフである侠客伝。私が属する玉川一門のお家芸でもあります。長い続きものの場合、前後のエピソードを知らないと話がわからないこともありますが、この『鹿島の棒祭り』は予備知識がなくても、平手造酒という剣豪の酒乱ぶりを楽しんでいただける(笑)。痛快な一席です」

また別の記者から、二枚同時に発売されたCDについて「どちらか一枚しか買えない方にはどんなアドバイスを?」と水を向けられると、「どなたでも構いませんから、周囲で2300円を持ってそうな人を探して、二人セットで買うのはいかが?」と、機知にとんだ返しで会場を和ませる。

そのうえで「たとえば落語から入って、浪曲に興味を持たれた方でしたら、笑いの要素がたっぷりと入った『新作編』を手にしていただくのがいいかもしれません。また講談や義太夫など、伝統芸鑑賞の下地をお持ちの方でしたら、古典編をお聞きになられるのがいいんじゃないかと」としっかり補足した。

ここで、マスコミとの「公開囲み取材」はいったん終了。今回の参加者から事前にメールで募った質問タイムへと移った。

「一年くらい前、銭湯の浪曲を聞いて、とても面白かったです。その続きはどうなるんですか?」という質問に、太福さんは「それは『銭湯激戦区』という新作ですね」と破顔一笑。ファンの方は先刻ご承知のとおり、このネタでは電気風呂に熱中する登場人物の会話が、面白おかしく語られる。そして最後は「近所にもっとすごい電気風呂ができた」「それはどんな銭湯だ」と話が進んだところで、浪曲お定まりの「ちょうど時間となりました〜」との締めがくるわけだ。

太福さんはこの背景をわかりやすく説明したうえで、笑顔で「だから続きはありません」と回答。でも参加者への“特別サービス”として、「きっとこういう電気風呂があるんじゃないか」という“想像”を披露した。このように、つねにビギナーの聞き手も視野に入れ、どんなベーシックな質問に対してもていねい、かつ誠実に答える。この姿勢こそが太福さんのファンを増やし、ひいては浪曲というジャンルの裾野を広げる大きな要素なのだろう。

ちなみにこの質問をした来場者は、12歳の男子。司会者に促されて挙手した小さな浪曲ファンの顔を見て、太福さんも「ありがたいですね。将来彼がどんな電気風呂を作ってくれるか非常に楽しみですね!」。ジョークを交えつつ、その表情はいかにも感慨深げだった。

その後も「新作のアイデアはどういうときに思い浮かびますか?」「のどのケアはどうされてますか?」など好奇心あふれる質問が続々と登場。「古典と新作、どちらに軸足を置きますか?」とのストレートな問いには……

「欲ばりですが、どちらにも重点を置いてやっていきたい。先輩方が磨いてこられた古典を継承するのはもちろんですが、浪曲は本来、創作や新ネタに向いた芸でもあります。そのときどきの時流に合ったネタを、パッと作って舞台に乗せられるのも大きな強み。その両輪どちらも全力でやっていくのが自分の武器であり、ひいては浪曲の強みでもあるのかなと」

さらに司会者が、参加者から直接の質問を募ると多くの手が挙がる。

「浪曲を聞くようになってまだ日が浅いですが、『天保水滸伝』にハマっています」という女性参加者から、物語の舞台をめぐる現地ツアーの実現性を問われ、「旅行保険などの事務手続きに時間がかかっていますが、行き先の町と協力して鋭意進めています」と答える一幕も。もし実現すれば、浪曲で描かれたまさにその場所で、太福さんが唸る『天保水滸伝』の一席を聞けるとのこと。ファンにとっては、嬉しいニュースだろう。

そしてマスコミ、ファンとの質疑応答がたっぷり重ねられた後は、和やかな写真撮影タイムをはさんで、皆さんお待ちかねの浪曲。みね子師匠の出囃子とともに再々登場した太福さんが、ひときわ大きな拍手で迎えられる。

今回の「公開囲み取材」でも大きなテーマになっていた浪曲の声。参加者の方々にその圧や響きを体感してもらうため、まずCD「古典編」に収録された『天保水滸伝』の外題漬け(物語の導入部)を披露する。

♪とォねェェのォ かわかぜェ たもとにいれて〜

「利根の川風 袂に入れて」というよく知られた出だし一節で、聴衆の耳目をギュッと一身に集める太福さん。ややしゃがれ気味だが、声量豊かで温かい唸り(歌)とタンカ(セリフ)が広い会場に響く。声や節回しに対する太福さんの熱い思いを聞いたばかりでもあり、参加者も水を打ったように静かに、その語りに聞き入っている。次第に高まるエモーションとグルーヴは、たしかにどこか、純和声ソウル・ミュージックの趣きもあるようだ。

わずか数分のさわりだったが、古典を唸る力量を見せつけた後は、雰囲気をがらりと一変させて新作に。CD「新作編」にも収録された「地べたの二人」シリーズから、特別に本日限定バージョンを披露!

サイトウさんカナイくんの名コンビが、中華食堂チェーンの「日高屋」で会話している場面から、「今日はここでちょっと」「うん、ちょっとって、なに?」という噛み合わない会話をへて、某若手浪曲師の「CD発売記念イベント」に向かうという“時事ネタ”を巧みに披露。ついさっきまでの真摯な話しぶりと裏腹に、すっとぼけた二人のタンカ(セリフ)とド迫力の節回しのギャップがなんともおかしい。会場は爆笑に次ぐ爆笑。取るに足りないやりとりを極限まで引っ張ったうえで、自分と参加者が集った会場の様子をリアルに実況。ラストの決まり文句、

♪ちょうど時間となりましたァァ
  世にも奇妙な地べたの二人、「囲み取材」はこれェまでェェェ

まで、たっぷり会場を盛り上げた。浪曲界の新しい風として、ジャンルの垣根をこえて幅広く活動する、“演芸界のワンダーボーイ”。そんなCDの売り文句に嘘はまったくない。改めてそう感じた夜だった。

取材・文/大谷隆之 写真/佐々木理趣(otonano編集部)
2018年12月7日(金)@ソニー・ミュージックエンタテインメント六番町本社にて

「玉川太福CD発売記念イベント
~唸りとタンカと囲み取材と~」

2018/12/10

速報!
イベント限定の新作
『地べたの二人~囲み取材~』を披露!!
詳細は後日!!

12月7日(金)玉川太福のイベント「玉川太福CD発売記念イベント~唸りとタンカと囲み取材と~」が都内某所で行われました。

イベントでは、マスコミ陣と共に応募に当選された一般の方々も取材や写真撮影などに参加。事前に募集したメールでの質問「古典と新作の二刀流、今後はどちらに軸足を置かれますか?」との問いに、「古典と新作の両輪で、どちらも全力でやっていきたいです。」と力強く答えるなど、終始、誠実で丁寧な対応で会場を温めた太福さんでした。

記者会見後は、このイベント限定バージョン「地べたの二人~囲み取材~」を披露し、終演後には希望者全員とのCDサイン&握手&ツーショット写真撮影会のサービスを。

記念イベント・囲み取材のタイトル通りに、多くの参加者の皆様にイベント内容拡散に協力をいただきました。本当にありがとうございました。 これからも太福さん情報を随時このページで報告していきますので、ぜひお楽しみに!!

本人自らが開封しながら(うなりながら)『浪曲 玉川太福の世界』「古典編」「新作編」のCDパッケージを解説

2018/11/28

玉川太福が[開封の儀]に登場!
『浪曲 玉川太福の世界』「古典編」「新作編」のCDパッケージを本人自らが開封しながら(うなりながら)アルバムを解説。浪曲の楽しさも体感できるスペシャル動画をお楽しみください。